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自動回転ドアが「再起動」、省エネ計算ソフト開発へ

2010/7/14 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 回転ドアメーカーなどは、環境に配慮した建築物への関心の高まりを背景に、自動回転ドアの省エネ性能を算定するプログラムの開発に着手した。2010年6月上旬には、データ収集を目的に、ドアが1周する間の「換気量」を計測。扉のすき間を漏れ出る空気量についても、6月21日、22日に埼玉県草加市の建材試験センターで計測した。2004年3月に六本木ヒルズ森タワーで起こった死亡事故で壊滅的な打撃を受けた日本市場の、復活の足掛かりとする考えだ。

換気量を測定する試験の様子。ドアの回転速度は毎秒50cm、65cm、75cmの3種。超音波式の計測機器を開口部の前面に5度刻みで設置して、風向と風速を測った。試験体は直径が2.2m、扉が4枚の小型モデルだ(写真:日経アーキテクチュア)

換気量を測定する試験の様子。ドアの回転速度は毎秒50cm、65cm、75cmの3種。超音波式の計測機器を開口部の前面に5度刻みで設置して、風向と風速を測った。試験体は直径が2.2m、扉が4枚の小型モデルだ(写真:日経アーキテクチュア)

 全国自動ドア協会に設置した自動回転ドア協議会が進めるのは、スライド式自動ドアと比較した場合に、どの程度の空調エネルギーを節約できるかを示すプログラムの開発だ。明治大学建築学科の酒井孝司教授の協力を得て、2011年の完成を目指す。

 自動回転ドアには、(1)外気が直接室内に流入しない、(2)高層ビルで上下階の気圧差によって発生するドラフト現象を防げる、(3)冷暖房効率が高い、(4)風除室が不要なのでスペースを要さない、といった利点がある。冷風の吹き込みを抑える効果などは経験から明らかだが、省エネ性能の「見える化」については対応が遅れていた。

 オランダのブーンイダムなど、世界の大手メーカーは独自のプログラムを持っているが、計算方法は統一されていない。「中立性を確保したプログラムの開発は、世界でも初めての取り組みではないか」と協議会のメンバーは意気込む。

 同協会によると、六本木ヒルズでの死亡事故後、年間100台程度だった自動回転ドアの設置台数が、年間2台程度まで激減した。プログラム開発は、事故で信頼を失った自動回転ドアの復活に向けた「のろし」でもある。

 

六本木ヒルズ自動回転ドア死亡事故とは
 2004年3月26日、東京都港区の六本木ヒルズ森タワー2階の正面出入り口で、6歳の男児が自動回転ドアに頭を挟まれて亡くなった。男児は挟まれ防止センサーの死角に入ったため、緊急停止機能が働かなかった。回転ドアは円筒状の壁体の内部を仕切りで2つに区切るタイプ。スチール製で重量は2.7tもあった。直径が4.8m、回転速度は毎秒80cmだった。三和シヤッター工業の子会社、田島順三製作所(当時)が製造、三和タジマが販売した。05年3月に東京地検が森ビルと三和タジマの両社の役員ら3人を業務上過失致死罪で在宅起訴。森ビルの2人に禁固10月・執行猶予3年、三和タジマの1人に禁固1年2月・執行猶予3年の判決が下った。

伝わらぬ安全対策

 事故発生後、経済産業省と国土交通省は「自動回転ドアの事故防止対策に関するガイドライン」を作成。05年には安全性に関する日本工業規格「JIS A 4721」が制定され、回転速度を毎秒65cm以下に抑えるなど、世界的にも厳しい基準が定められた。メーカーは、戸先が折れる機構を扉の設計に取り入れて挟む力を小さくするなど、安全性を増した製品を独自に開発した。

 しかし、事故の教訓を生かした安全対策の成果や導入例は、社会にほとんど伝わっていない。自動回転ドア協議会の企画広報リーダーでブーンイダムジャパン社長の中原博氏は「アピールしたいが、なかなか関心を持ってもらえない」と話す。

長野赤十字病院では4月、正面玄関に直径4.8mの製品を設置した。設置前は人の出入りでドアが開き放しになり、冷風がロビーに吹き込むため、年間7カ月は玄関を閉鎖していた。長野のような寒冷地での評価は依然として高いものの、導入数は大幅に減っているのが実情だ(写真:日経アーキテクチュア)

長野赤十字病院では4月、正面玄関に直径4.8mの製品を設置した。設置前は人の出入りでドアが開き放しになり、冷風がロビーに吹き込むため、年間7カ月は玄関を閉鎖していた。長野のような寒冷地での評価は依然として高いものの、導入数は大幅に減っているのが実情だ(写真:日経アーキテクチュア)

 事故を起こした製品は悪であるというイメージだけが定着し、何が良くて、悪いのかを判断しない、あるいは判断できない――。そんな社会の「思考停止」が、製品の排除に結び付いている面がある。「当時の記憶が残っており、今でも採用に踏み出せない」と打ち明けるオフィスや商業施設の運営者は少なくない。

 安全工学の専門家である工学院大学教授の畑村洋太郎氏と明治大学教授の向殿政男氏は、リスクをきちんと理解した上で、安全対策を施した製品を積極的に取り入れるべきだと指摘する。事故から7年目、生まれ変わって動き出そうとする自動回転ドアを、見つめ直す時期に来ている。

(日経アーキテクチュア 木村駿)

[ケンプラッツ 2010年7月13日掲載]


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