長寿命で省エネの照明として注目を浴びるLED(発光ダイオード)。家庭用の電球型LED照明(LED電球)はもちろん、土木・建築の分野でも利用が拡大しつつある。前回までの太陽光発電に続き、今回と次回の2回で道路施設に対するLED照明の利用実態を見ていく。

LED照明を採用した板谷トンネル。2010年3月26日に全線供用を開始した。共立電機製作所は現在、高圧ナトリウム灯で明るさを補わなくても出入り口付近で使える明るさのLED照明を開発済みだ(写真:宮崎県)
宮崎県は2009年11月、国道219号の板谷トンネルにLEDを使った照明灯を設置した。当初は、水銀を使って白色の光を出す無電極放電ランプにする予定だったが、県がLEDも性能が同等だと判断して採用を決めた。トンネル照明灯へのLEDの本格採用は国内で初めてだ。
板谷トンネルは同県西米良(にしめら)村にあり、長さ933mで全幅8m。2車線の道路が通る。LEDを使った白色の基本照明を56個、入り口照明と坑外灯にオレンジ色の高圧ナトリウム灯を合計38個設置した。トンネルの出入り口付近の照明は、目が慣れるように中央より明るくする必要があり、高圧ナトリウム灯で明るさを補った。
LED照明の寿命は、無電極放電ランプと同じ約6万時間だ。1個の価格は、無電極放電ランプの8340円に対し、LED照明が1万9600円と高いが、「照明器具が小さく取り付けの手間がそれほどかからないので、総額は同程度と試算している」(宮崎県西都土木事務所西米良駐在所の後藤国彦主査)。電気代は年間4万円ほど減らせるとみている。
トンネル用のLED照明を開発した共立電機製作所(宮崎市)の船ケ山保幸副社長は、「コンピューターのシミュレーションでは問題なかったが、実際に設置されたところを見て、もう少し照度分布を均一にした方がいいと判断し、1週間後に反射板の角度を変えた」と初のトンネルLED照明灯にこだわりを見せた。
LED道路照明を大阪府が認定

大阪府の公募で選ばれた、因幡電機製作所(大阪市)が3月に国道308号に設置したLEDの道路照明灯。右は高圧ナトリウム灯(写真:大阪府)
大阪府は09年7月、LED道路照明灯の技術評価制度を創設した。LED道路照明灯はJIS(日本工業規格)に規定がないことなどから、製品の信頼性や有効性を把握する必要があると判断したからだ。技術評価制度で認定した製品のうち、府内の中小企業が製造したものを道路照明灯として発注するベンチャーモデル事業も併せて実施した。
応募の意思を示した約20社のうち、応募を受け付けた6社の製品で実地試験を実施。大阪府LED道路照明技術評価委員会(委員長:伊瀬敏史大阪大学大学院工学研究科電気電子情報工学専攻教授)の審査を通過した4社の製品を認定した。大阪府は、このうち2社の製品をベンチャーモデル事業として3カ所に131灯設置した。残り2社の製品は、電気工事会社から採用されて、10年3月までに4カ所で115灯設置された。
大阪府都市整備部交通道路室道路環境課環境整備グループの植田和史総括主査は「LED化を本格的に進めるには認定の拡大が必要だ。メーカーの参加意欲が強く、技術開発も進んでいる」と話す。10年度も引き続き技術評価制度を実施する。
大阪府には、多くの自治体からこの制度についての問い合わせがあったという。道路照明灯のLED化を検討している自治体は多いようだ。
九州地整はコストとCO2量も審査
国土交通省九州地方整備局(九州地整)は5月末まで、LEDを使った道路照明灯の技術を公募した。高圧ナトリウム灯に比べてCO2排出量は2分の1、ライフサイクルコスト(LCC:照明器具費と交換費と電気料金などの合計)は5分の4を目標値とする。

九州地方整備局が実施しているLED道路照明灯技術の公募での技術提案書の例。照明計算条件は、平均路面輝度1.0cd(カンデラ)/m2(片側2車線道路)、道路幅員7.0m、路肩幅員0.5m、歩道幅員0m、器具高さ10m、照明灯オーバーハング0m、保守率0.7、アスファルト路面〔平均照度換算係数15(lx/cd/m2)〕、片側配列、灯具間隔40m。カッコ内の数値は、九州地整による一般的な数値。オレンジ文字は記入例(資料:国土交通省九州地方整備局)
技術提案書では、現在の基準や法令などをすべて満たすことに加え、九州地整独自の確認項目を盛り込んだ。例えば、従来の照明の多くは点光源だが、LED照明は複数光源なので、光がどの方向にどれくらい出ているかを確認するためのデータを求める。また、CO2排出量とLCCの提案値の確認に必要な灯具、LEDモジュール、電源装置の設計寿命なども確認する。
9月に技術を選んだ後、実現場で試行調査をしてその評価をする。選定した製品は実際に50~60灯設置する予定だ。設置工事時にはNETIS(新技術情報提供システム)の登録番号を指定して発注する。
九州地整管内の直轄国道には約3万灯の道路照明灯があるが、LED照明灯はまだない。公募技術の評価を踏まえてLED化を進める方針だ。
北海道開発局は寒冷地向けの試験
国交省北海道開発局はLED道路照明灯の現地試験を2月から始めた。11年3月まで実施する予定。冬の北海道の厳しい気象条件下でも安全を確保できるか確認する。水銀灯や高圧ナトリウム灯などの道路照明は発光部で熱が発生するので、その熱が照明に付いた雪を溶かす。しかしLEDの発光部は熱の発生が少ないので、雪が照明に付いたり凍ったりした場合の影響を調べる。
北海道開発局は、道内の国道と道道の全道路照明をLED照明に変えた場合、年間のCO2排出量と電気料金が半減すると試算している。
(フリーライター 中川 美帆)
[日経コンストラクション2010年4月23日号の記事を基に再構成]
中川美帆(なかがわ・みほ)
早稲田大学教育学部卒。鉄鋼・非鉄専門の日刊紙、土木専門の月刊誌での記者を経て、2008年に独立。「日経コンストラクション」を中心に、建設経営や、国内外の道路、橋、トンネル、港湾といった土木の工事にかかわる記事を書いている。
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