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「曲げられない女」(日本テレビ系) でも大切なことは言えない…

2010/3/23 0:40
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

早紀「アボガドではなくアボカドです!」

 瞬発力不足で悔しい思いをすることがある。その瞬間言えなかったら、その言葉を口にするチャンスはもう二度と戻らない。

 「曲げられない女」(日本テレビ系、1月13日~3月17日)の荻原早紀(菅野美穂)はすごい。「萩原(はぎわら)さん」と呼ぼうものなら、間髪いれずに「荻原(おぎわら)です!」と返す。友たちとの団らん。一人が「おいしいからさ、そのアボガドのサラダ」とすすめれば、「アボカドです!」と広辞苑を開いて見せる。彼女の口癖は、「スミマセン。正確に言っておきたいので」だ。

 33歳。司法試験に9回落ち続けている。「正確に言いたい」のは彼女の性分かもしれない。しかし、この瞬発力は、彼女の人生を物語ってもいる。9年も社会人をしていると、瞬発力もそこそこ身につくし、たくましくもなる。そうやって対応しないと、なんだか負けたような悔しい思いをする。だから、ついつい瞬発力を発揮してしまう。

 第8話、彼女は大切な友だちに伝えたい言葉をずっと探していた。心配してくれたのにケンカ別れしてしまったからだ。やっとたどり着いた言葉は、彼女が生まれてから一度も言ったことのない言葉だった。「たすけて」。

 瞬発力でタイミングを逃さないようにといろいろ言ってきた。だけど、本当に大切な人に伝えたい大切な言葉は言えずにいる。荻原早紀はそんな女性だ。

 大学での講義、数々の会議、いくつもの問い合わせに、何本もの電話。私も毎日よくしゃべっている。9年どころかもっと長い間。だけど、本当に「正確に言っておきたい」気持ちはちゃんと話せているかなぁ。(中町綾子)

 ドラマを中心に、テレビの話題をお届けします。気になるセリフに、ちょっと立ち止まってみませんか。

筆者紹介

中町綾子(なかまち・あやこ) 日本大学芸術学部放送学科教授。テレビドラマ評論家。専門はテレビドラマの表現分析。1971年石川県生まれ。日大芸術学部卒、同大大学院芸術学研究科修士課程修了。著書に「ニッポンのテレビドラマ 21の名セリフ」(弘文堂)。


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