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企業年金の支給額、勤続時の評価がカギ
老後のお金のすべて(2)

2011/10/26 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 本連載では、老後の収入と支出に関する疑問や不安を解き明かしていきます。第2回の今回取り上げるのは、企業年金です。定年退職まで時間がある人は、まだ企業年金のことについて詳しく調べたり、深く考えたりしなくてもいいと思うかもしれません。しかし、第1回で解説した公的年金だけでなく、企業年金にも減額のリスクがあることには今から注意しておくべきです。

 

■老後のお金Q&A

【Q】サラリーマンの3人に1人は退職後に企業年金を受給すると聞きました。企業年金とは、どのようなものですか。
【A】退職金の一部を分割で受け取る私的な年金です。

 企業年金は企業が掛け金を出し、退職後、従業員に年金として支給する私的な年金のこと。サラリーマンにとっては公的年金に上乗せできる老後の貴重な財源となる。企業年金には確定給付企業年金や厚生年金基金など、いくつか種類があるが、企業年金を受け取れるサラリーマンは約1300万人。厚生年金加入者の3人に1人という恵まれた人たちだ。

 退職金の一部を分割払いで年金として受け取る仕組みなので、退職金規定や従業員の勤務年数、給与で金額が変わるし、退職金の何割を何年で受け取るかでも年金の額は変わる。

労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」事務局長の塚原 哲さん。調査、執筆のほか、労働組合主催の金融関連セミナー講師として全国を行脚。CFP認定者

労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」事務局長の塚原 哲さん。調査、執筆のほか、労働組合主催の金融関連セミナー講師として全国を行脚。CFP認定者

 企業年金に詳しい生活経済研究所長野の塚原哲さんによると「企業によって退職金制度は違うが、大手製造業の場合、退職金の額は驚くほど同じ。大卒で約2000万円。2500万円に届く企業はほとんど見かけなくなった」という。

 企業年金はこの退職金の一部を原資とし、企業が利子補填しながら運用しつつ、一定期間、または終身で従業員に年金として支給する。企業年金の種類や会社ごとのルール、受け取り方による税金の違いで、最適な年金の受け取り方は変わってくるが、定年退職してから厚生年金を受け取るまでの“空白期間”には頼りになる存在だ。図1の例では60~64歳がその空白期間に該当するが、仮に厚生年金の支給開始年齢が今後引き上げられることになれば、企業年金の重要性はいっそう増すことになる。

図1 企業年金を受給する1961年(昭和36年)生まれの人の定年後の世帯月収イメージ  サラリーマンの場合、収入が途絶える年金空白期間をどうやって生きていくかが大問題。企業年金はありがたいが、生計を維持するには企業年金だけでなく、取り崩せる貯蓄もそれなりに必要だ。

【図の前提条件】
 夫は50歳(昭和36年生まれ)で38年厚生年金加入。定年退職後、退職金のうち844万円を10年間の年金として受け取る(利率2.5%、月額約8万円)。妻は50歳(昭和36年生まれ)。国民年金38年加入相当の基礎年金受給権あり。

図1 企業年金を受給する1961年(昭和36年)生まれの人の定年後の世帯月収イメージ  サラリーマンの場合、収入が途絶える年金空白期間をどうやって生きていくかが大問題。企業年金はありがたいが、生計を維持するには企業年金だけでなく、取り崩せる貯蓄もそれなりに必要だ。

【図の前提条件】
 夫は50歳(昭和36年生まれ)で38年厚生年金加入。定年退職後、退職金のうち844万円を10年間の年金として受け取る(利率2.5%、月額約8万円)。妻は50歳(昭和36年生まれ)。国民年金38年加入相当の基礎年金受給権あり。

■退職金制度を理解すべし

 ただし、企業年金を取り巻く環境も厳しくなっていく方向だ。企業年金の原資である退職金の減少と年金額減額リスクの増大だ。

 退職金は年功で支払われるイメージがあるが、近年は従業員の現役時代の評価、業績が退職金額に反映されるポイント制を採用する企業が増えている。経団連の調査では82%の企業がポイント制を採用済みだ。企業年金がある会社に勤めている人は一度、自分の会社の制度を確認してみるといいだろう。もう、何年勤めたからいくらもらえるというように、勤続年数で退職金の金額が決まる時代ではない。年金額固定の「確定給付企業年金」から、年金額は運用成績次第の「確定拠出年金」への制度移行も多くの企業が終えている。

日本生活設計代表取締役の村田純一さん。企業年金マネジメント・退職給付改革コンサルティングなどのほか、退職者向けセミナーも手掛ける

日本生活設計代表取締役の村田純一さん。企業年金マネジメント・退職給付改革コンサルティングなどのほか、退職者向けセミナーも手掛ける

 多くの企業でライフプラン研修を行う日本生活設計の村田純一さんは「ポイント制はもう常識。また、明察に富んだ経営者なら企業負担の重い確定給付企業年金は縮小廃止、確定拠出年金導入に踏み切るのは当然」という。

 ポイント制と確定拠出年金が普及すればスーパーサラリーマンは別にして「大半のサラリーマンの退職金は減る」(村田さん)。

 減額リスクは日本航空(JAL)の例が記憶に新しい。企業の調子が悪くなると受給している年金額が減額されるリスクが顕在化している。

 現役時代の評価が退職金や企業年金を左右する時代だと認識すべきだ(図2)。その上で「年金を増やすには付与の仕組みを理解して上手にポイントを稼ぐ。ポイント計算を会社や企業年金基金に任せきりにしないで毎年のポイントを確認することが重要」(村田さん)という。

図2 現役時代から知っておきたい、退職金制度の仕組み
 今どきの退職金は現役時代にどれだけポイントを稼いだかで額が変わってくる。年金を増やすには仕組みを理解して、評価ポイントが獲得しやすい資格のとき高い評価を得て、効率的にポイントをためることが重要だ。ここでは、ポイント制に基づく退職給付制度を導入している企業で、どのように退職金や企業年金の金額が決まるのか、一般的な例を紹介した。労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」事務局長 塚原 哲さんの協力で作成。

図2 現役時代から知っておきたい、退職金制度の仕組み
 今どきの退職金は現役時代にどれだけポイントを稼いだかで額が変わってくる。年金を増やすには仕組みを理解して、評価ポイントが獲得しやすい資格のとき高い評価を得て、効率的にポイントをためることが重要だ。ここでは、ポイント制に基づく退職給付制度を導入している企業で、どのように退職金や企業年金の金額が決まるのか、一般的な例を紹介した。労働組合シンクタンク「生活経済研究所長野」事務局長 塚原 哲さんの協力で作成。

 退職金は年金としてではなく、一括で受け取る事も可能で、人によっては税金が有利になるケースもある。ただ、一括で受け取ったら数年で消えてしまったという話も多い。逆に、年金でもらう場合、給付額は固定だ。インフレに転化したら物価は上昇、年金の価値は実質的に目減りしてしまう。

 村田さんは「退職金や企業年金も大切だが、終身、働いて月5万円でも10万円でも稼ぐ手だてを現役時代から準備しておいた方が人生のパフォーマンスは高いのではないか」とアドバイスする。

(日経マネー 本間健司)

[日経マネー2011年10月号の記事を基に再構成]

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