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食物アレルギーは肌の湿疹から始まる 乳児期から保湿を

2014/12/21 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

日経ヘルス

 食物アレルギーなどのアレルギー疾患の発症に、皮膚の湿疹が関わっていることが分かった。特に、乳児期の肌を健康に保つことで、その後のアレルギー発症を予防することが可能になる。

 食物アレルギーの発症が最も多いのは0歳で、患者のほとんどは10歳以下の乳幼児。その理由は乳幼児の消化機能が未熟なためと考えられてきたが、最近の研究で、乳児期のアトピー性皮膚炎が食物アレルギーリスクを高めることが分かった。

 「子どものアレルギーを予防するために妊娠中・授乳中に卵や牛乳などを避ける人がいるが、そうした特定の食品の摂取制限には意味がない。それよりも新生児のときからしっかり保湿をして肌のバリア機能を高め、湿疹が起こらないようにするほうが効果がある」と国立成育医療研究センター研究所の松本健治部長。

 海外の研究では、ピーナツを食べなかった子どもより、食べていた子のほうがその後ピーナツアレルギーになりにくかった。ピーナツ油を肌に塗った子どもにピーナツアレルギーが多いことも分かっている。

●経口免疫寛容
食べたものを異物として攻撃しないように、免疫が寛容になること。経口免疫(減感作)療法はこの仕組みを利用した治療法。
●経皮感作
湿疹を介して取り込まれたアレルゲン(抗原)に対して、免疫反応が起こること。この状態が続くことでアレルギー反応が起こる。

 「健康な皮膚にアレルゲン(抗原)が触れても心配はないが、問題は湿疹がある肌。湿疹があるところに抗原が触れ続けると、数日間でアレルギー発症のきっかけとなるIgE抗体ができてしまう」(松本部長)

アトピー性皮膚炎などで皮膚に湿疹があると、免疫細胞が表皮を貫いて突起を伸ばし、食物などのアレルゲンを取り込んでしまい、食物アレルギーが発症する。見た目にはそれほど湿疹がひどくなく、赤くなっている程度でも、免疫細胞の突起が伸びるのでご用心

アトピー性皮膚炎などで皮膚に湿疹があると、免疫細胞が表皮を貫いて突起を伸ばし、食物などのアレルゲンを取り込んでしまい、食物アレルギーが発症する。見た目にはそれほど湿疹がひどくなく、赤くなっている程度でも、免疫細胞の突起が伸びるのでご用心

 生体には、最初に入ってきたものに対して免疫を獲得する「感作」というシステムがある。この免疫反応でIgE抗体が作られ、アレルギー疾患を発症してしまう。

 本来皮膚は感作を起こしにくいが、湿疹があると皮膚表面の抗原を免疫細胞が取り込むために、“経皮感作”が起きる。だから保湿をしてバリア機能を高めることが重要なのだ。

[左]国立成育医療研究センターの臨床研究では、新生児期から保湿剤を塗布していた乳児は、保湿していない乳児に比べて32週間後にアトピー性皮膚炎を発症するリスクが30%以上低かった(データ:Journal of Allergy&Clinical Immunology Vol.134,Issue 4,October 2014) 
[右]保湿している乳児のほうが、特に湿疹が起きやすい下肢外側の角質水分量(SCH)も多い。皮膚のバリア機能の一部が強化されたと考えられる(データ:同)

[左]国立成育医療研究センターの臨床研究では、新生児期から保湿剤を塗布していた乳児は、保湿していない乳児に比べて32週間後にアトピー性皮膚炎を発症するリスクが30%以上低かった(データ:Journal of Allergy&Clinical Immunology Vol.134,Issue 4,October 2014)
[右]保湿している乳児のほうが、特に湿疹が起きやすい下肢外側の角質水分量(SCH)も多い。皮膚のバリア機能の一部が強化されたと考えられる(データ:同)

 一方、口から入った食物に対しては、免疫反応が起こらないようにするシステムが働く。これを“経口免疫寛容”という。この仕組みを利用して、アレルギーの原因食物を少しずつ食べてアレルギー耐性を獲得する治療法があるが、同様に、健康な皮膚から少量の抗原を塗りこんで花粉症などを治療する経皮免疫療法も研究が進んでいる。

 「大人でも経皮感作により食物アレルギーを発症する可能性がある。湿疹ができたら早めにステロイド外用薬で治療を」と松本部長。年齢を問わず、湿疹治療は重要と強調する。

新生児のうちに保湿をすることで湿疹を作らないことが重要。一度アトピー性皮膚炎を発症してしまうと、保湿剤を塗っただけではIgE抗体が作られることを止められないので、ステロイド外用薬などを使用して炎症が治まるまで治療する必要がある

新生児のうちに保湿をすることで湿疹を作らないことが重要。一度アトピー性皮膚炎を発症してしまうと、保湿剤を塗っただけではIgE抗体が作られることを止められないので、ステロイド外用薬などを使用して炎症が治まるまで治療する必要がある

この人に聞きました

松本健治さん
 国立成育医療研究センター研究所免疫アレルギー研究部 部長。高知医科大学医学部卒業。同大学医学部付属病院小児科、国立小児病院小児医療研究センター、理研免疫アレルギー科学総合研究センターなどを経て現職。日本アレルギー学会指導医。

(ライター 牛島美笛)

[日経ヘルス2015年1月号の記事を基に再構成]


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