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横浜・尾花監督、「分析野球」機能せず
スポーツライター 浜田昭八

2011/9/18 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 「勝負は人集めで決まる」といったのは、西鉄や大洋を日本一にした知将・三原脩だ。優れた手腕をたたえられたのに照れて、戦うのは選手といいたかったのだ。どんな名将も、駒がそろわなければ手の打ちようがない。

■補強で尾花監督と球団に考え方のズレ

 だから監督たちは球団に補強を強く求める。だが、キャリアの浅い監督は強く主張できない。与えられた戦力に不満を抱きながら戦わざるを得ない。監督就任2年目の横浜・尾花高夫(54)が、まさにその状態だ。

 2度目の監督就任だった大矢明彦が率いていた横浜は2008年、09年と2年連続最下位(09年はシーズン途中で田代富雄が監督代行に)。それも、両年ともに勝率3割台という“突出した弱さ”だった。

 老練監督でも、戦力の積み増しを相当やらないと戦えない。球団は当然、強力なバックアップを約束して監督就任を求めた。

 だが、尾花の考える補強と、球団側のそれにはズレがあった。これは尾花のケースに限ったことではない。球団にはそれぞれ、台所事情がある。“身の丈”に合った補強で済ませると、監督にはどうしても不満が残る。

■投手陣を立て直せると考えたが

 ただ、尾花自身にも事態を多少甘く見たフシがあった。ロッテで伊良部秀輝、ヤクルトで石井一久、ソフトバンクで和田毅、杉内俊哉、巨人で上原浩治、高橋尚成らを鍛え、育てた投手コーチとしての手腕は、球界でも高く評価されてきた。

 外から見た横浜投手陣には、魅力的な素材がいっぱいだった。自分なら4年連続でチーム防御率4点台の横浜投手陣を立て直せると考えた。

 横浜港を周遊する観光船で行われた就任会見では「アナライジング・ベースボール(分析野球)」を高らかにぶち上げた。

 横浜勢は力があるが、素質だけでプレーしている感じ。データを駆使して分析し、準備する姿勢が欠けていると見た。とりわけ投手陣は、この点を是正すればチーム防御率は飛躍的によくなるはずと考えた。

■就任1年目、チーム防御率は悪化

 初めて臨んだドラフト会議では、1巡目に地元出身の長距離砲、筒香嘉智(横浜高)を指名したほかは、すべて投手を獲得した。これで若い投手の競争が激化し、投手陣全体の底上げにつながると期待した。

 だが、就任1年目の10年のチーム防御率は4.88。前年より0.52も悪くなった。エース三浦大輔の調整失敗、開幕投手に起用するほど信頼したランドルフの不調が響いた。それ以上に、チームに染みついた準備不足が好転を阻んだ。

 打線も打つ割には、つながりがよくなかった。尾花監督がダイエー時代に見込んだ快足の島田誠をコーチに加え、一発に頼らない“ランニング・ゲーム”を増やそうとした。

 だが、これもチームの体質が邪魔をした。相変わらずスピードを欠いた試合を続け、島田は1年で辞任した。

■「コミュニケーション不足」と指摘される

 2年目、11年のシーズンに臨むにあたって、尾花も考えを改めざるを得なかった。プロなら教えられる前に自分で考え、工夫すべきと考えて現役時代を過ごした。

 この姿勢がロッテのゼネラルマネージャー広岡達朗や、ヤクルト監督の野村克也に評価され、コーチに呼ばれた。

 コーチになっても、この姿勢は変えなかった。優しく声をかけ、ときには選手と酒を酌み交わすのが、いい指導者とはいえないという考えで押し通した。

 ところが、監督になるとこれが選手との「コミュニケーション不足」と指摘された。

 君臨する監督という印象を消し、選手との対話を心掛けた。だが、尾花のクールな性格もあり、ぎこちない感じはぬぐえない。今季は出足でつまずいた。5月初めに持ち直す気配があったが、セパ交流戦でたたかれて沈んだままだ。

■交流戦でダメージ

 分析野球がうまく機能していない象徴に、2年続きの交流戦での不振が挙げられる。顔合わせが少ないパのチームの対戦でこそ、分析力がモノをいう。昨季は12球団で最下位、今季は11位。ここで受けたダメージが大きくて立ち直れない。

 球団の経営状態が芳しくなく、身売りもが現実味を帯びてきた。3年契約最終年の来季も尾花監督である保証はない。

 投の国吉佑樹、打の筒香というホープが飛躍しようとしている。不安のない状態で、采配を振るわせてやりたいが……。

 おばな・たかお 1957年和歌山県出身。新日鉄堺から78年ドラフト4位でヤクルト入り。14年投げて112勝135敗29セーブ、防御率3.82。95年からロッテ、ヤクルト、ダイエーとソフトバンク、巨人でコーチのあと、2010年に横浜監督に就任。同年最下位、今季も最下位に低迷している。


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