日本経済新聞社

記事利用について
印刷 印刷

「カッコーの巣の上で」 自由求め、管理体制に反抗する姿に普遍性

2014/7/21 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 生きることと、自由であることの2次方程式にプラスの解はないのか。米国の名作映画として知られる「カッコーの巣の上で」は、刑務所の強制労働を逃れるため精神障害と偽って州立病院に入った男が、患者の人間性まで統制しようとする管理体制に入院中の患者を巻き込んで反抗する話。終始緊迫した舞台から、人間個人の生命を操作の対象とする現代の「生政治(せいせいじ)」の一端が不気味に顔をのぞかせる。

 闘う男マクマーフィを演じるのが爽やかな小栗旬。エネルギッシュで、緊張感を保持しつづける演技が芝居の重心をつくり出す。対する管理体制の象徴がラチェッド婦長(神野三鈴)で、事態に冷静に対処し、じりじりとマクマーフィを追いつめていく。そのクールさが魅力だが、管理者としての冷酷な面がもっと出てもいい。

 看守を黒人が務めたり、患者の中に電気ショック療法で話せなくなったネーティブアメリカンがいたり、米国の人種、民族問題が織り込まれている。また、母親の強い支配下にある若者や、革命幻想にとりつかれた患者などもいるが、病院の規則に慣らされ無気力な状態に陥っていた。それをマクマーフィが病棟に女友達を入れたりして反抗に駆り立てる。今回、婦長役は母性を強調しているようだが、婦長がなぜ絶対的な権力を振るえるのかよく見えない。

 「カッコー」には俗語で「まぬけ、変人」の意味がある。原作はケン・キージーのベストセラー小説(1962年)で、ジャック・ニコルソン主演による映画は75年。自由を求めることが社会の管理的体制と衝突するという普遍的な関係を描いている。また、人間の尊厳とは何か、精神に異常があるかないかを誰が決めるのか、という問題も提起している。河原雅彦の上演台本・演出。8月3日まで、東京芸術劇場。

(文化部 河野孝)


本サービスに関する知的財産権その他一切の権利は、日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。また、本サービスに掲載の記事・写真等の無断複製・転載を禁じます。