昨年3月11日の東日本大震災後、通販のフェリシモの動きは早かった。翌日、土曜日の会議室には幹部だけでなく自主出勤した一般社員も詰めかけた。衣料品、生活用品などの支援物資は震災発生から1週間後には第1便を送り出した。「全社が条件反射のように動き始めた」。社長の矢崎和彦さん(56)は振り返る。
阪神大震災の年の秋、本社を大阪から神戸市に移した。復興支援に込める熱意は社風でもある。
東北の被害が明らかになる中、普段どおり被災地にも通販の商品を届けるのかという決断を迫られるが、届けることに決めた。
矢崎さんには阪神大震災で同じことをやって喜ばれた記憶がある。「何も楽しいことがない生活に、幸せな日常が帰ってきた」と顧客から言われた。
ビジネスの枠を超えた対応が「お見舞いの品」。通販会員に救援物資となる自社商品や、避難所などで使いやすいバッグを社員直筆のカードも封入して届けた。費用は2億円に及んだが「震災復興を体験した企業として踏み込んだ対応をしたかった」(矢崎さん)。
今、同社とユーハイムやモロゾフ、ロック・フィールドなど神戸の有志企業15社は被災地の支援活動「エール・フロム・KOBE」に取り組む。支援物資を送るほか、東北地方の職人らと組み東北の生産品を使った商品企画も進んでいる。
「神戸の企業らしい支援活動とは、当事者意識を持った活動のこと」と矢崎さんは語る。被災地に対し、自らの経験や経営資源を生かしたいと考える。
今月下旬には各社の経営者の肉声をネットで配信する取り組みも始める。阪神大震災の痛手から立ち直った企業の経験やノウハウを、トップ自らが動画の中で伝える試みだ。
1回目はつくだ煮製造の小倉屋柳本(神戸市)社長の柳本一郎さん(57)が登場する。東北に対して何ができるのか。神戸の企業人は今なお新たな模索を続けている。
復興デザイン全国募集、自治体も新手法
自治体も従来の仕事の枠を超えた社会貢献に乗り出している。神戸市がデザイナーや企業と連携して進める「『デザイン都市・神戸』推進会議」。デザインによって生活上のさまざまな課題や問題を解決することを目指している。その活動の力は東日本大震災においても発揮された。
昨秋には産業・雇用や生活インフラの回復に役立つ発想を募る「震災復興+デザイン」コンペを実施。全国から300件が集まった。
震災直後は現地で4色の「できますゼッケン」のアイデアを提案。赤は医療介護、緑は生活支援、青は語学、黄色は専門技能を示す。ネット上から取り込んで印刷し、得意なことを手書きして服に貼る。被災現場での意思疎通の難しさに直面したボランティアに活用された。
商業デザインから社会貢献に踏み込んだ一連の取り組みは、行政、企業や専門家など多様な立場の人が強みを持ち寄り、発展させる場ともなる。
(おわり)
天野賢一、宮内禎一、伊野知宏が担当しました。
矢崎和彦、フェリシモ、柳本一郎、ロック・フィールド、ユーハイム、モロゾフ、小倉屋柳本
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