【シリコンバレー=岡田信行】米アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏が5日死去した。「iTunes(アイチューンズ)」などジョブズ氏が築き上げた事業モデルは、世界の電機・IT(情報技術)ビジネスの風景を一変させ、アップルを「世界で最も価値ある企業」に導いた。CEOの退任を発表してからわずか1カ月強。現経営陣は、カリスマ経営者亡き後も、アップルを成長させることができるか。
「覚悟はしていたがこんなに早いとは」。5日夕、パロアルト市の高級住宅街の一角にあるジョブズ氏の自宅前は、献花や追悼メッセージがあふれた。近所に住む10歳の少女は「アイフォーンを開発してくれてありがとう」と書き込んだ。
スピーチの達人、容赦ない厳しい上司、魔術師……。ジョブズ氏を形容する言葉は様々だが、誰もが認めるのは、同氏が誰よりもアップルを愛し、ユーザーを驚かせるために腐心してきたこと。そのために、時に会社のあり方や主力製品も大胆に変えてきた。
■音楽配信で飛躍
コンピューターを個人が利用できるようにと、パソコンを開発して世に問い、成功した創業期。業績悪化で創業した会社を追放された雌伏の時。どん底のアップルに戻り、製品を絞り込んで経営再建に注力した時期。パソコンを再定義した「iMac(アイマック)」や携帯音楽プレーヤー「iPod」をヒットさせた復活劇――。
挫折を知る成功者は必要とあらば、過去の栄光にとらわれず、既存の自社商品を潰すこともためらわなかった。そしてアップル飛躍のきっかけを作ったのが、インターネット経由で音楽などを配信する「iTunes(アイチューンズ)ストア」だ。2億2500万人を超える利用者のクレジットカード情報を集め、少額課金で楽曲などを購入できる仕組みを作った。
ジョブズ氏は事業の細かい点まで口を出したことで知られる。「アップルはジョブズ氏そのもの」(証券アナリスト)だった。ただ、製品開発やソフト開発、調達、生産、販売など各部門でジョブズ氏の厳しい要求に耐えてきた経営幹部の手腕は手堅い。
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