来年7月の地上アナログ放送の終了に伴い、総務省は空いた周波数帯の電波を新しい携帯端末向けの放送に割り当てる。NTTドコモとKDDIの2陣営が免許を申請中だ。電波の有効利用は重要な課題だが、「ワンセグ放送」に加え新しい携帯放送を始めるからには、国民に真に役立つサービスにしてほしい。
新しい携帯放送は有料を予定。一方的に映像を流す従来型の放送のほか、視聴者が端末に情報を蓄積して見る形など様々な使い方を想定している。フジテレビジョンなど民放やドコモが推す「マルチメディア放送」と、KDDIなどの「メディアフロー」の2方式が競っている。
民放とドコモによる方式は地上デジタル放送の延長技術で、大きな出力で広い地域を一度にカバーする。新設する「東京スカイツリー」など放送用の送信設備を活用できるので事業者にとっては専用の基地局への投資が少なくて済む。
KDDIなどの方式は米通信技術会社のクアルコムが開発した技術で米国の携帯電話会社がすでに採用している。専用の基地局を数多く設けることで、ビルの陰や屋内でもよく映るようにした。その分、設備投資にかかる費用は多い。
総務省は技術と経済性の両面から8月半ばに事業者を選ぶ考えだが、重要なことは利用者が本当に使えるサービスかどうかだ。ワンセグ放送は屋内など映らない場所がある。新しい携帯放送は放送にとどまらず、電子書籍端末などへの情報配信手段としても使えるようにすべきだ。
ドコモは国産、KDDIは海外の技術を使うが、世界に開かれた方式かどうかも重要だ。日本メーカーが海外に端末を売れなければ携帯電話の二の舞いとなりかねない。
携帯放送は地デジ移行で生まれる新サービスだけに、総務省は2012年春の開始を期待している。だが空いた周波数を拙速で割り当て、利用者の要望に沿わないサービスを始めても意味がない。過去に「モバイル放送」など衛星技術を使った携帯端末向け放送で失敗例もある。
両陣営による公開での技術説明会を開いた総務省の試みはよいが、もっと聞かなくてはならないのは利用者の声である。
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