9月の民主党代表選で再選を目指す菅直人首相と、小沢一郎前幹事長を支持するグループとの対立が激しくなっている。小沢氏が菅首相の対抗馬として名乗りをあげるかどうかが最大の焦点だ。
小沢氏の代表選出馬には大きな違和感を覚える。与党の代表選は、首相を選ぶ選挙である。小沢氏が代表選で勝てば「小沢首相」が誕生するが、それは多くの有権者の意識と乖離(かいり)している。各種世論調査では、小沢氏の出馬を支持しない声が多数派だ。
小沢氏は自らの資金管理団体の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件について、国会で一度も説明しておらず、けじめがついていない。この事件で小沢氏の元秘書ら3人が起訴されており、小沢氏の政治的、道義的責任は免れない。
しかも東京第5検察審査会の結論次第で、小沢氏が起訴される可能性も残っている。4月に第5検察審は小沢氏を「起訴相当」と判断した。審査会が再び「起訴相当」と議決すれば、小沢氏は強制起訴され、刑事被告人となる。
結論が出るのは代表選後になる見通しだが、仮に小沢氏が新代表に就任した後に起訴相当の議決が出れば、国政の混乱は避けられまい。
憲法75条には、国務大臣は首相の同意がなければ訴追されないという定めがある。民主党内では、小沢氏が出馬する場合の理由を「首相になると起訴されなくなるからだ」と見る向きもある。こうした見方が出ること自体、首相としての適格性を疑わせる。
強制起訴という結論に至らなくても、国会論戦は小沢氏の「政治とカネ」の問題一色に染まりかねない。1年間に3人目の首相交代となれば直ちに衆院を解散するのが筋だが、小沢氏支持グループにその覚悟があるようにはみえない。
小沢氏支持グループは昨年の衆院選のマニフェスト(政権公約)の実行を唱えている。だが、2010年度予算編成で早くも財源の壁にぶつかり、衆院選の公約が破綻していることは誰の目にも明らかだろう。具体的な財源の裏付けを示さずに、公約の順守を求めるのは無責任だ。
参院選の大敗で精彩を欠く菅首相にも注文がある。熱心だった消費税の増税問題にも及び腰だが、続投を目指す以上、しっかりした政権構想を示し、この難局に臨む気概をみせてもらいたい。新人議員らの顔色をうかがい、多数派工作に腐心するだけでは、再選を果たしたとしても、強い実行力は生まれない。
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