(2012年2月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
筆者は先日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が、同国政府がシリアのバシャル・アル・アサド大統領の残忍な抑圧を支持する理由を説明するのを聞いた。もっとも、本人がそういう表現を使ったわけではない。元キャリア外交官のラブロフ外相は賢明な男だ。外相はあらゆる詭弁(きべん)を弄し、悪意ある西側諸国のプロパガンダに反して、ロシアは完全に公平に行動していると説明した。それはまるで冷戦時代に戻る旅のようだった。
■全面的な内戦に陥りつつあるシリア
国連安全保障理事会でのロシアの拒否権行使(中国も同調した)は、予想可能かつ、実際に予想されていた結果をもたらした。アサド大統領は一般市民も武装組織も見境なく、反体制派に対する軍事攻撃を強化した。死亡者数は急増している。シリアは全面的な内戦に陥りかけており、交渉による権力移行を目指すアラブ連盟の取り組みは一段と後退している。
拒否権行使には何通りもの説明がある。ロシアにとってアサド王朝はソビエト時代以来の戦略的な同盟相手だ。ロシア政府(と中国政府)は、他国にだまされて、リビアのムアマル・カダフィ大佐の失脚につながった国連決議案を受け入れさせられたと思っている。シリアのタルトゥース港は、ロシアにとって極めて重要な海軍基地だ。大規模な武器売買契約も絡んでいる。こうした事情をすべて、ロシア政府おなじみの不干渉の原則に加えることができる。
■ブレジネフ書記長に似てきたプーチン首相
だが、ミュンヘン安全保障会議でのラブロフ外相の講演は、別のことも伝えていた。ロシアは守勢に立たされているのだ。来月の大統領選挙は、ウラジーミル・プーチン首相の新たな大統領任期(12年)の始まりを告げるはずだった。ところがプーチン首相は今、かつて友好的だった群衆からやじを飛ばされ、モスクワの街頭で大規模デモに見舞われている。
これに対するお決まりの反応は、外部の敵を責めることだ。国内での不満からアラブ世界の民衆蜂起に至るまで、ロシア政府はあらゆる事象を西側による策略というレンズを通して見る。こうした主張によると、ロシアは冷戦時に得ていた尊敬を与えられなければならない。だが実際には、プーチン首相は任期終盤のレオニード・ブレジネフ旧ソ連書記長と似ている。国外での大言壮語は国内での権力衰退を隠してくれないのだ。
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