国立劇場の正月は黙阿弥特集。有名作「三人吉三」に、珍しい小品舞踊「奴凧(やっこだこ)」の復活。程の良い取り合わせのはずだが、肝心の「三人吉三」が初芝居としては陰々としている。三人の吉三役者に少し計算違いがありはしまいか。元よりこの芝居が傑作たるゆえんは、江戸のバルザックともいうべき大アルチザン作者の、社会の実相と人間観相の妙にあるが、それを「遊び」という糖衣にくるんで見せたところに、歌舞伎という大人の娯楽の奥行きがある。
殊に序幕「大川端」の三人の出会いの場はもっとワクワクさせてもらいたい。「月も朧(おぼろ)に白魚の」というお嬢吉三の余りにも有名なアリアがなぜあれほど親しまれてきたか。福助のお嬢が脚本を細かく読み、工夫を凝らしていることは察しられるが、凝っては思案にあたわずだ。同じ弊は幸四郎の和尚、染五郎のお坊にも程度の差はあれ通じている。せっかくの適役をそろえながらもったいない限り。
国立劇場、歌舞伎、レビュー