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秋の夜長、菊の花の意外な効用

2010/10/2 7:00
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重陽の節句では、菊に一晩綿をかぶせ、その綿で体をぬぐい、長寿を願う
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重陽の節句では、菊に一晩綿をかぶせ、その綿で体をぬぐい、長寿を願う

 10月になると秋が急に深まるような気がします。8日は旧暦の9月1日にあたります。旧暦で秋といわれるのは7月から9月の3カ月ですから、暦の上ではいよいよ晩秋。秋も深まって当然という季節ですね。ちなみに8日は、寒露といって、空気が冷え込み、朝晩草花につく露が、冷たく凍りそうになる季節の始まりだといわれています。確かに、朝晩はずいぶん冷え込むようになってきました。

 秋の花と言えば菊です。10月16日は旧暦でいう9月9日にあたり、この日は菊の節句とも呼ばれる重陽の節句です。最近の日本では、あまりお祝いする習慣のない重陽の節句ですが、ひとけたの奇数では一番大きな9が二つ重なる重陽の節句は、とても縁起の良い日として、本来とても盛大なお節句でした。

 重陽の節句には、不老長寿の薬酒といわれる菊酒を飲む習慣があります。満開のこの季節につんだ菊の花を酒に浸して、それを飲むとよいというのです。

 また、重陽の節句の前の日に咲いた菊の花に真綿をかぶせて、花の香りと露をうつしとり、それで体をぬぐう習慣もあったとか。そうすることで、不老や若返りが期待されたといいます。健康や長寿を願って、菊の香りのする真綿を贈る習慣もあったそうです。なんと、優雅な習慣でしょう。

 以前、そんな、真綿を菊にかぶせる着せ綿の体験会をするよと声をかけてもらって、出かけたことがありました。香りを楽しむといわれたので、香水のようないい香りを期待してしまったのですが、実際には真綿を肌につけたときに感じるほのかな香りでした。「こんな香りでも楽しむというんだなぁ」とちょっとびっくり。日ごろ、消臭剤だの芳香剤だのの強烈な香りにさらされているせいか、自分の鼻が、ほのかなよい香りにいかに鈍感かを痛感させられた体験でした。

 同じく香りを楽しむのなら、乾燥させたものに熱湯を注いでお茶にするという手もあります。日本ではあまりみかけない「菊花茶」です。中国では広く愛飲されているようで、長く上海に住んでいた友人は「子どもが熱を出すと、菊花茶を飲ませなさいっていわれたわ」と言っていました。炎症を和らげ、熱をとる作用で知られる菊花茶は、中国では定番的な健康茶の一つのようです。特に肝臓や目に効果が高いといわれ、パソコンに向かって仕事をしているというと、薬膳をやっている人や中国人の知り合いからは「菊花茶は飲んでいますか?」といわれたりします。

 菊花茶を飲んでいるから、近視が治ったり、老眼のすすみが緩やかになったりするかといえば、さすがにそこまではいきません。けれども、長い時間パソコンとにらめっこをしていて、目が疲れた時などに菊花茶を飲むと、やさしい香りとほのかな甘さのせいか、目の疲れが軽くなるような気がします。コーヒーを飲み続けるよりは、胃にもよさそうなので、仕事のときに飲むお茶は、なるべく菊花茶や似たような効用があるといわれるジャスミンティーにしています。

 ヨーロッパでは、同じキク科のカモミールが、胸やけや胃痛を和らげ、気持ちを安定させるハーブティーとして広く愛飲されています。1年間をイタリアで過ごした息子は、就寝前に、必ずママがカモミールティーを入れてくれたとか。帰国する際も、ママがティーバッグをたくさん持たせてくれました。また、炎症を和らげる効果が高いので、けがをしたら、カモミールティーに患部をひたしておくといいとは、イギリスのおばあちゃんの知恵袋だそうです。

 秋の夜長。月見酒もいいけれど、菊の花と香りを楽しみながら、ゆっくり眠れるハーブティーでティータイムというのもよさそうですね。

(ナチュラルライフ研究家 佐光紀子)

「シンプル家事」や季節感のある食卓など、子どもと一緒に体験したい暮らしの工夫や、親子のコミュニケーションについてつづります。

筆者紹介

佐光紀子(さこう・のりこ)=翻訳家・ナチュラルライフ研究家。日本の暮らしに合った、無理のないエコライフを提案している。著書に「男の掃除」(日経BP)「重曹大事典」(ブロンズ新社)など。1961年生まれ。メーカー、証券勤務を経て現職。東京在住。家族は大学生の長男と高校を卒業した次男、中学生の長女と夫。

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