「夏休みはどうしていたの?」。アメリカ人の友人に聞いたら「子どもたちは早々にキャンプに行っちゃったの。去年までは上の子だけ参加していて、下の子は家にいたんだけど、今年は2人そろってキャンプに出かけたから、子どもたちが家にいなかったの。だから、久しぶりに、私も本当の夏休みだったわ。仕事はあったけど、のんびりできた!」と話してくれました。
友人のところだけでなく、アメリカでは、長い夏休みにサマーキャンプに行く子どもたちが少なくありません。キャンプの内容も様々で、スポーツ中心のものや自然体験といったものから、演技やダンスなど一芸を究めるようなプログラムのものまで多種多様。親元を離れて集団生活を送るだけでも貴重な経験ですが、友人は「全米各地から子どもたちが集まるから、いろいろな地域の子どもと友達になれるのよ」と、そのメリットを教えてくれました。
同世代と1カ月も集団で過ごせば、けんかも経験するでしょうけれど、仲の良い友達もできるでしょう。あちこちからいろいろな子が集まってくれば、話す言葉も多少は違うでしょうし、自分の知らない世界を経験している同世代の子どもたちと時間を共有し、切磋琢磨(せっさたくま)しあう経験は、子どもたちの視野を広げる良いチャンスに違いありません。
1年間のイタリア留学から昨夏に戻ってきた次男によると、イタリアでも、長い夏休み、家族は個々が自由に行動するそうです。息子が過ごした北イタリアの地方都市では、朝昼晩の食卓を家族全員で囲むのが当たり前の習慣。「家族は一緒」が常態だけに、その反動か、夏休みは子どもたち同士で友達とキャンプに出かけたり、子どもたちの世話をおばあちゃんに頼んで両親はバカンスに出掛けたりするのだとか。ホームステイさせていただいた大家族のお宅も、夏の間はみんなが出払ってしまい、家にいるのはせいぜい1人か2人という状態だそうです。
振り返って日本の中高生の夏休み。多くは部活動と塾、そして宿題に大わらわ。熱心な部活のメンバーともなれば事実上休みはありません。中高生にとって、悪いことを覚える危険性も高い夏休み。部活に精を出していてくれれば、親としては安心です。宿題もなければ生活がだらけてしまいがちですから、ないと困ります。でも、長い夏休みだからこそ、学校から離れて友達をつくったり、親や学校から解放されたりする機会がもう少しあってもよかったのかなぁ。友人や息子から海外の夏休みの過ごし方を聞いて、ふとそんなことを考えました。
わが家の娘も小学校時代は毎年夏休みに1週間だけですが、山形県の南蔵王のキャンプに参加していました。小学校4年から中学3年までの子どもたちと大学生・社会人ボランティアの合わせて100余人が過ごすキャンプは学校以外の友達ができたり、中学生のお姉ちゃんの話を聞かせてもらったり、それは楽しいひとときだったようです。帰宅後も、メールでやりとりをしたり、文化祭によんでもらったり、交流が続きました。
一緒に参加したことがある次男も、休みの日にキャンプで知り合った友達と会ったり、卒業してからもキャンプ出発日にみんなで見送りに出掛けたりしていました。学校のことで相談に乗ってもらうこともあるようですし、学校で行き詰まったときに気持ちを切り替えられたりもしたようです。
でも中学に入ると、部活も忙しくなり、キャンプから足も遠のきます。中学生になった娘も今年は不参加。「学校優先が当たり前」と娘も私も思っていたので「仕方がないわね」とあきらめてしまいました。
学校の生活や友達は中学生や高校生にとってとても大切。でも、それがすべてだと、万一、何か歯車が狂ってしまったときに、逃げ場がなくなって追い詰められてしまう恐れもあります。万一に備えて外に世界をつくるというと、とても後ろ向きに聞こえるかもしれませんが、学校以外にも友達がいて、世界がもう少し広がることは、子どもの経験の幅を広げる意味でも必要なことかもしれません。
そんなことを考えたら、やっぱり今年もキャンプに行かせればよかったかなぁという気になってきました。学校、部活、宿題。ついつい、目の前のことをうまくこなすことに親も子も目がいきがちです。「せっかくの夏休み、学校以外の世界に羽を広げるチャンスをもっと尊重した方がよかったかなぁ」。今ごろになって、ちょっと反省モードの新学期です。
(ナチュラルライフ研究家 佐光紀子)
「シンプル家事」や季節感のある食卓など、子どもと一緒に体験したい暮らしの工夫や、親子のコミュニケーションについてつづります。
筆者紹介
佐光紀子(さこう・のりこ)=翻訳家・ナチュラルライフ研究家。日本の暮らしに合った、無理のないエコライフを提案している。著書に「男の掃除」(日経BP)「重曹大事典」(ブロンズ新社)など。1961年生まれ。メーカー、証券勤務を経て現職。東京在住。家族は大学生の長男と高校を卒業した次男、中学生の長女と夫。
夏休み、自然体験