■内田氏「連帯は被贈与感から始まる」
内田氏は若者が働かなくなったのは「『努力すれば報償が与えられる』という枠組みそのものに対する直感的な懐疑のせい」とみる。
若者は「『みんなが争って求めている報償というのは、そんなにたいしたものなのか?』という疑念にとらわれている。一流大学を出て、一流企業に勤めて、35年ローンで家を建てて、年金もらうようになったら『そば打ち』をするような人生を『報償』として示されてもあまり労働の動機付けが高まらない」
内田氏は「被贈与感」の重要性を指摘する。「連帯せよ、とマルクスは言った。それは自分の隣人の、自分の同胞をも自分自身と同じように配慮できるような人間になれ、ということだと私は理解している。そのために社会制度を改革することが必要なら好きなように改革すればいい。でも、根本にあるのは、『自分にたまたま与えられた天賦の資質は共有されねばならない』という『被贈与感』。そこからしか連帯と社会のラディカルな改革は始まらない」「今の日本社会に致命的に欠けているのは、『他者への気づかい』が人間のパフォーマンスを最大化するという太古的な知見への理解」
さらに内田氏は次のように説明する。「もともと日本には、弱者をとりこぼさないような相互扶助的な社会システムが整っていたのではなかったか? そのような『古きよき伝統』に回帰しようというタイプの主張を若者たちが掲げたら、大きな『うねり』が発生する可能性がある」。ただ、今の日本の若者たちは「あまりに深く米国的な利己主義にはまり込んでいるので、そういう『アイデア』は彼らからは出てくるようには思えない」
■原田氏「企業依存社会から脱却を」
大和総研の原田氏は「システマチックにうまくいっているように見えるが、一方で社会がどんどん硬直的になってきた。1970年代までは企業社会に入らなくても何とか生きていけたが、今では企業に入らないとリスクが高すぎる。こうした過度の企業依存社会を変える必要がある」と指摘。「スティーブ・ジョブズ氏が『ステイ・フーリッシュ(愚かであれ)』と言ったように、社会の変革には多様な人材が必要だ。愚かであろうとする人材を輩出するためには、企業に入ろうが入るまいが、リスクが同じにならないといけない。そのためにも雇用の流動化を促し、企業の内外で変わらない社会保障制度の整備が求められる」と、抜本的な制度改革を訴えた。
(電子報道部 河尻定)
内田樹(うちだ・たつる)
1950年生まれ。東大文学部卒。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。主な著書に「下流志向」「日本辺境論」「街場のメディア論」など。ブログ「内田樹の研究室」も人気を集める。現在は神戸女学院大学名誉教授。
城繁幸(じょう・しげゆき)
1973年生まれ。東大法学部卒業後、富士通に入社。人事部門に携わる。2004年に同社退社後、人事コンサルタント、評論家として活動。主な著書に「若者はなぜ3年で辞めるのか?」「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」「7割は課長にさえなれません」など。ジョーズ・ラボ代表。
原田泰(はらだ・ゆたか)
1950年生まれ。東大農学部卒。74年に経済企画庁(現内閣府)入庁。財務省財務総合政策研究所次長などを経て2004年から大和総研チーフエコノミスト。専門はマクロ経済。主な著書に「日本国の原則」「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「データで見抜く 日本経済の真相」など。大和総研顧問。
山田昌弘(やまだ・まさひろ)
1957年生まれ。東大文学部卒。東京学芸大学教授を経て現在は中央大学文学部教授。専門は家族社会学。主な著書に「パラサイト・シングルの時代」「希望格差社会」「『婚活』時代」(共著)など。
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