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動かぬ体「もう仕事は無理か」と絶望 関節リウマチ(1) 斎藤昌子さん(47)

2010/10/31 7:00
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 関節リウマチは、体のあちこちの関節が炎症のため腫れて痛み、進行すると関節の変形や機能障害が起こる病気です。

試験の採点など自宅で仕事をすることも多い(茨城県土浦市)
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試験の採点など自宅で仕事をすることも多い(茨城県土浦市)

 1995年春、三十路を過ぎて、私は突然関節リウマチを患いました。急速に進む関節破壊に伴う激痛に、米国のテキサス・インスツルメンツがつくばに立ち上げた研究所で、アメリカ人所長の秘書として働いていた順風満帆な生活は一変しました。

 腫れは、膝(ひざ)から足首、肩、顎(あご)、手首や手の指まで広がりました。体の右側の次は、左側の同じ個所が腫れあがるのは不気味でした。たまらず職場近くの整形外科医を受診、初めて「リウマチかもしれない」と言われ、消炎鎮痛剤を処方されました。

 「リウマチ?高齢者の病気でしょ?私は30歳を過ぎたばかりなのに、なんで?」。怒りにも近い感情が渦巻く中、本屋で「リウマチ」という単語を表題に含む書物を三冊買いました。「原因不明」「治らない」という内容に目の前が真っ暗になるようでした。

 生活も「できないこと」ばかりになりました。日中は痛み止めで抑えても、夜中、助骨の間に太い畳針を刺すような鋭い痛みで眠れない、タオルケットが重くて寝返りを打つことも、朝自分で起き上がることもできない、通勤車のドアが開けられない、体の硬直でシートベルトが締められない……。ただ痛くて涙が出ました。このまま悪化するのかという恐怖から、筑波大附属病院を受診しました。自宅から車で数分の場所に「膠原(こうげん)病リウマチアレルギー内科」のある大学病院があったのは幸運でした。

 大学病院では1日1千人以上の予約患者数にぼうぜんとしました。診断は「慢性関節リウマチ」。顕著な症状は手の変形ですが、私も手の関節に「糜爛(びらん)」が出て骨が溶けだし、激痛の原因となっていました。自己免疫力の制御が効かず、主治医は「進行が速いので強力な治療が必要」と診断、当時まだリウマチ薬としては未承認だった免疫抑制剤のメトトレキサート(MTX)を処方しました。するとわずか2週間で魔法のように痛みが取れたのです。

 MTXの副作用も理解せず、リウマチが完治した訳でもないのに有頂天になった私は、仕事中心の生活に戻りました。体調不良時の分を取り返し、キャリアアップに向けた資格取得のため専門学校に通い、再びテニスラケットを握れる喜びも噛みしめました。

コンパクトMRIによる左手の画像。白い矢印部分は、関節の骨が溶けて固まっている(筑波大学附属病院で撮像)
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コンパクトMRIによる左手の画像。白い矢印部分は、関節の骨が溶けて固まっている(筑波大学附属病院で撮像)

 MTX服用開始から半年後の95年10月末、私は絶対安静で病院のベッドにいました。A型急性肝炎。服薬で免疫力が落ちた身体で無理した結果です。3カ月の休職後に復帰し、徐々に通常勤務に戻ると、入院来すべての薬を止めても大丈夫だったリウマチが、とんでもない暴れようで再燃しました。MTXはもう使えず、金製剤注射を打つと薬疹(しん)に苦しみ、他の薬も全く効果がありません。

 復帰直後は研究部門の事務職女性が秘書業務も補佐してくれました。所長は、大学から迎えた日本人に代わり、大学で秘書だった女性も急きょ東京から手伝いに通ってくれたのですが、さらに派遣での人員補充も打診されました。発病前は1人でこなしたことができないふがいなさ、何より周りに迷惑をかけているのが明らかで心苦しく思いました。でも、焦るほど受診回数は増えてゆきます。

 薬で痛みを抑えて早めに出社しても、階段で2階のオフィスに行くまで時間がかかりました。後に着いた上司の足音に振り向き、手すりにすがって「すみません、先に行ってください」と言った時、言葉を失った上司のろうばいと憐憫(れんびん)の表情に、「もう無理かな。仕事をあきらめるべきなのか」と私は絶望しました。

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斎藤昌子(さいとう・まさこ) 1963年京都生まれ。85年国際科学技術博覧会を機につくばへ。自動車研究所勤務を経て、91年テキサス・インスツルメンツ筑波研究開発センター入社。95年関節リウマチ発症。2002年から地域の中核病院の院長室勤務。地域医療連携室等を経て、現在は専門学校の診療情報分野で非常勤講師

◇     ◇

 「患者は働く」は、病気やその後遺症と折り合いをつけながら働き続ける姿を紹介するコラムです。本人にとっての働く意味やその上での工夫、周囲の配慮などについて、直腸がん、糖尿病、子宮頸(けい)がん、悪性リンパ腫、リウマチの5人の筆者が毎週リレー形式でつづります。

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