私の連載の最後ということで、まずこの日本経済新聞社電子版に原稿を書かせていただいたことを感謝し、お礼を申し上げます。透析から腎臓移植と今まで約20年、原稿を書くことによって当時感じていたことを思い出させてもらいました。
透析中、そして腎臓移植をしてから今まで、周りの皆さんに支えられて過ごしてきました。しかし、恥ずかしさもあり、なかなか面と向かってはお礼を言えませんでした。この連載を通して、少しは感謝の思いを言葉にできた気がします。
もし、今でも透析治療をしていたとすると、約20年間という長い年月ゆえの心臓の負担もあり、元気で働けているか分からず、もしかするとこの世の中に存在できていたか分からない状況だと思っています。
自分が腎臓移植手術を受けることができたのは、善意の方からの『生命(いのち)の贈りもの』をいただけたからだと感謝しています。いつも思っているのは、いただいたいのちを決して無駄にしてはいけないということです。
現在このように普通の方と一緒に仕事ができ、仲間と同じ趣味で楽しめ、有意義な生活を送ることができているというのは、自分にとっては当たり前のことではないのです。移植した腎臓がいつ元気でなくなり、また週3回、1回4~5時間の透析治療に戻るかもしれないからです。
だからこそ、いまの自分を輝かせるために、仕事は必要だと考えています。
自分の中で、「仕事(働く)とは何か」と考えることがあります。もちろん、働くことによってお給料をもらい生活するのは当然のことですが、それだけではない気がしています。仕事は、自分の存在を再確認させ、自分の価値を認識させてくれるものだと思っています。生きていることの証なのです。
自分は、会社の中で存在価値のない人間にはなりたくないと思っています。会社の業績のために何かをしようなんて思っていません。同じ仕事をしている仲間のために、少しでも役に立てればと思って仕事をしています。仲間のために仕事をすれば、それが会社のためになると思っているからです。
また、腎臓をいただいた方に対しても、一生懸命生き、仕事をし、元気で過ごしていることが唯一の恩返しではないでしょうか。その方のためにも、働けることの意義を考えながら職場ではいつでも楽しく、自分ができることは進んでやっています。
また、健康な人とは違う経験である透析、移植をしたということが、生きること、働くこと、遊ぶこと……すべてのことに対して自分を前向きにさせていると思っています。
これからも、いただいたいのちを大切にし、仕事ができる喜びをかみしめて楽しく働き、楽しい人生を満喫したいと思っています。
最後になりましたが、移植をしていることで、健康面で普通の人よりも気に懸けなければならない自分に働く場をいただきました各会社に感謝し、お礼を申し上げたいと思います。
(野口明吉さんの項は今回で終わります)
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野口明吉(のぐち・あきよし) 1958年生まれ。父の会社で働いていた81年、腎臓病が判明。7年間の透析治療を経て97年に腎臓移植。その後2度の転職を経て、現在はNTTコムウェア・ビリングソリューション勤務。趣味のボウリングでは世界移植者スポーツ大会で2001、03、05年の3回優勝。
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「患者は働く」は、病気やその後遺症と折り合いをつけながら働き続ける姿を紹介するコラムです。本人にとっての働く意味やその上での工夫、周囲の配慮などについて、乳がん、クローン病、脳卒中、腎臓移植、適応障害の5人の筆者が毎週リレー形式でつづります。
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