816年、空海(弘法大師)が真言密教の修行の地として開いた高野山。人口4000人弱の静かな町を訪れる外国人観光客が増えている。中でもフランス人宿泊者の伸びが著しい。2009年は前年比3割増の約1万3000人。世界遺産に登録された後、09年にミシュラン・グリーンガイド・ジャパンで三つ星を獲得したことで弾みがついた。ミシュランを手に、高野山を歩いてみた。
大阪から南海電鉄急行で高野山に向かう。和歌山の橋本駅を過ぎるころから、車窓は緑深き森に包まれる。高野六木といわれる杉、ヒノキ、高野マキ、赤松、モミ、ツガなどが茂る原生林だ。
ミシュランの冒頭の言葉が頭に浮かんだ。「深い森に覆われた山の頂にある高野山は、日本における最も大きな宗教都市である」。ガイドのおすすめは宿泊施設を備えた寺「宿坊」に泊まり、早朝のお勤め「勤行」(ごんぎょう)を体験すること。フランス人に人気のコースをたどることにした。
標高1000メートルの町に着くと、真夏でも涼しく感じる。総本山である金剛峯寺(こんごうぶじ)を中心に117の寺が立ち並ぶ。西端の大門から、東端の奥之院まで約5キロ、町全体がひとつの大きな寺の境内のようだ。空海は宗教哲学者であったと同時に庶民教育、土木灌漑(かんがい)の先駆者でもある。地下納骨堂とされる御廟(ごびょう)には、今なお1日2回、僧侶が食事を運んでいる。1200年前から淡々と続くお勤めを、外国人は敬意のまなざしで見つめるという。
高野山には52の宿坊があり、外国人客が半数を超えるところもある。英語で法話を行う蓮華定院(れんげじょういん)や英文案内を工夫する清浄心院(しょうじょうしんいん)などである。中でもフランス人は古い趣ある寺を好む。そのひとつ、無量光院にお世話になった。
同院では十数年修行を続けるスイス人僧侶のクルト厳蔵さんが、5カ国語を駆使して外国人客に対応する。フランス人とは数時間にわたり宗教談義をかわすことも珍しくない。夜はお膳で運ばれた精進料理を部屋でいただく。中庭からのモリアオガエルの鳴き声、にわかに降り出した雨だれの音がBGMだ。
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