JPらのほか、ライバルたちについても主役に匹敵するほど綿密に設定を練った。“アツさ”の一要素として「お祭り気分」が必要、と2人は考えた。
「劇場版『銀河鉄道999』に原作者、松本零士さんの別作品の登場人物であるキャプテンハーロックが出てきて、僕らは子供ながらにワクワクした。そのうれしくなる感じを出したかった」
そして、いよいよ“アツさ”を具現化する要の作画工程へ。07年に終える予定が、09年までかかった。CGを排した手描きにこだわり、約30人のメーンスタッフで計10万枚を描く困難な作業に挑んだ結果だ。「キャラクターや疾走するエアカーのリアルで力強い動き、計算されない形を自由に表現するには手描きしかなかった」と小池は語る。
さらに、キャラクターを動かすたびに背景画も一枚一枚描いた。このことに、シナリオ作りに参加した脚本家の桜井圭記(33)は「通常ではあり得ない」と驚く。
背景画の上にキャラクターを描いた透明のセル画を載せて動かすのが一般的な手法。背景画を使い回せて労力を省けるからだ。「小池さんの手法だと絵がとてもダイナミックになるし、スピード感も違う。制作者の皆が分かっているが、大変すぎるから通常はやらない」と桜井はうなる。
海外で大きな反響
小池は作画チームの先頭に立った。誰よりも早い朝の7時半から作業を始め、夜10時まで黙々と絵を描いた。4年間、ほぼ毎日だ。
完成したアニメを見て石井は目を丸くしたという。「僕がデザインしたキャラクターは細かい線を描き込んだ劇画調の絵だった。それが小池さんの手で細部に至るまでさらに密度の濃い絵柄に進化し、しかも背景と一体となって動いていた」
完成した作品は09年夏、スイスの伝統あるロカルノ国際映画祭で初めて上映。観客からは「今の日本のメルヘン調のアニメ映画とは違い、際だったオリジナリティーがある」といった反響があったという。2つの才能が生み出した作品は、日本では10月9日に公開される。
=敬称略
(文化部 諸岡良宣)
[日本経済新聞夕刊2010年9月22日付]
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