切手はメディアである――。それが郵便学者である著者の一貫した主張だ。原則として国家が切手を発行する以上、時の政権の主義主張が反映されるのは当然のことだ。逆に言えば国家意思を確認する上での貴重な情報源でもある。
核兵器保有を宣言し、国際社会を挑発する北朝鮮が、かつて反核切手を発行していたことをご存知だろうか。1988年のソウル五輪に対抗して、平壌で開催した第13回世界青年学生祭典の宣伝のために発行したもので、廃棄される核ミサイルが描かれている。
70年代から80年代にかけて、この国にも飛び火した「反核運動」の実態についてはよく覚えている。「反核」をうたうため、反対しづらいものがあったが、内実は米国を中心とする西側諸国の核は悪で、それに対抗する東側諸国の核は善という、極めて政治的なものであった。
後に北朝鮮に亡命した「よど号」グループの実行犯、そして一部の支援者たちが、この運動に関わっていたことが明らかになる。
北朝鮮にはぜひ、もう一度、反核切手を作って欲しい。破棄されるミサイルの絵は、もちろんテポドンだ。
★★★★
(スポーツジャーナリスト 二宮清純)
[日本経済新聞夕刊2010年9月8日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
内藤陽介、切手