
田上義也
札幌市からバスで2時間半。日本海をのぞむ港町、北海道岩内町の木田金次郎美術館で「田上義也(たのうえ・よしや) 北方建築の種」展が開催中だ(11月7日まで)。建物の南側の大きなガラス窓、雪を落とす傾斜をつけた屋根、保温性に優れたコンパクトな空間。寒冷地の風土に配慮した田上が道内各地に残した建物を紹介する。
田上は1919年、帝国ホテル建設事務所に入所し、ライトの教えを受けた弟子の一人。ホテルの完成披露パーティー当日に発生した関東大震災を機に突然、北海道へ渡り、開拓民の粗末な小屋に衝撃を受けたという。北海道に移住した田上は北国の生活に適した「北方建築」を模索する。
風土や感性を重視
「北見郷土館」(現・網走市立郷土博物館、網走市)や戦後には道内のユースホステルの大半を設計。岩内町でも35年、ガラス張りのモダンなカフェ「いりかせ宇喜世」(54年焼失)を建てている。木田金次郎美術館の岡部卓学芸員は「北国出身でない人の視点がもたらした新しさがあり、地方に経済力があった時代の象徴」と魅力を語る。
田上が小樽市に設計した住宅「坂牛邸」を保存・活用する非営利組織「小樽ワークス」は今年2月、田上義也記念室を邸内に開設した。北海道大学の角幸博教授が生前の田上から寄託された約500点の図面や資料を細密に複写し、ほぼ原寸大で展示している。
田上がライトに師事したのは3年間。その交流の中から「建築にむかう姿勢や建築家としてのありかたを学んだ」と角教授はみる。「ライトは田上先生に『日本の桜になりなさい』と話した。それはデザインだけにこだわるのではなく、日本の風土や感性を大切にするようにという教えだったのではないか」
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