ユニークなアイデアを駆使し、現代アートを開拓した米国生まれのアーティスト、マン・レイ(1890~1976年)。東京・六本木の国立新美術館で開かれている「マン・レイ展」の出品作約400点の半数以上を占める写真作品は、現代人に適した表現を求めて走り続けたマン・レイの実験精神と写真への愛着を物語っている。
会場の終わりに近い一角にひときわ色鮮やかな写真が並んでいる。シャンソン歌手のジュリエット・グレコやイヴ・モンタン、妻ジュリエットなどを写した写真で、画面は小さいが、神秘的な雰囲気の色彩を放っている。これらを撮った時期、マン・レイは60代。第2次大戦の戦火を避けて帰国していた米国から戻り、再びパリで活躍し始めていた。
自伝「セルフ・ポートレイト」によると、このころマン・レイは写真を職業にすることを断念していた。にもかかわらず、こうした作品を制作したのは「この表現媒体にたいする好奇心は続いていた」(千葉成夫訳)からだ。特にカラー写真に関心を寄せたが、カラーポジフィルムはプリントすると色彩が鈍くなる。そうした欠点を克服するため工夫を重ね、鮮やかさを損ねない技法を開発して作品にしたのが一連の写真だ。1950年代の後半にはポラロイド写真を応用した作品も制作した。テクノロジーの進展に合わせて表現を開拓する現代のメディアアートに近い着想が読み取れる。
マン・レイ、セルフポートレイト、写真、現代アート
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