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吟行の楽しみ(その9) 俳句一口講座 葛

2010/8/28 7:00
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◇     ◇

(たかだ・まさこ)1959年岐阜県生まれ。東京大文学部卒。主婦で2女の母。俳句結社「藍生」所属

(たかだ・まさこ)1959年岐阜県生まれ。東京大文学部卒。主婦で2女の母。俳句結社「藍生」所属

 吟行とは本来、季語の現場に立つということです。今回はいささか変則的な吟行の楽しみ方をお届けします。

 大阪に住んでいたころの友人たちとの「祇園祭吟行」も、6年目となりました(2008.08.02、2009.09.05の項参照)。今年の予定は、同じ宿をとり、宵山の真夜中に出る南観音山の「暴れ観音」に挑戦する、というもので、すでに去年会ったときに立てていました。

 が、田舎の母の具合が思わしくなく、私はぎりぎりになって行き先を変更しました。京都へは行かず、母と一緒にいようと決めたのです。

 俳句とは遠い時間を過ごすつもりでいたところへ、仲間からメールが届きました。欠席投句をせよ、と。

 冒頭に記しましたように、現場の空気を吸いながら、降ってくる言葉を書き留めていくのが吟行の醍醐味です。欠席投句はいささかつらく、正直うろたえましたが、ドタキャンの責任をとって(?)踏ん張ることにしました。

 母の病室は入院棟の10階にあります。夕方にわかに空がかき曇り、遠く西の空に稲妻が何本も走りました。京都の方角です。7月16日の時点では梅雨はまだ明けていませんでしたが、翌日の山鉾巡行は明けて快晴になるかもしれない、と思いました。

 実家に落ち着き、父の入浴中に作句開始です。

   宵山の提灯(ちょうちん)に灯のそろふころ      正子

   橋の上から名を呼ばれ川床(ゆか)涼み

 川床は涼をとるために川に突きだして作る桟敷(さじき)のことです。鴨川沿いに茶屋や料亭の川床が連なる景は、京都の夏の風物詩のひとつです。今年は鴨川増水のニュースもありましたが、無事営業できているでしょうか。

   さつと降り祇園囃子の街濡(ぬ)らす

   宵山の群衆(くんじゅ)に梅雨の雷すこし

 作句中にも京都からメールが届きました。宵山に八坂神社で行われる石見神楽(いわみかぐら)の写真が、雨が上がったというコメントとともに。

   梅雨明けの間近の風を囃すなり

 暗くなるにつれ、コンコンチキチンの祇園囃子が高まっていきます。お囃子の音色を、遠く離れた田舎家に聴くような気がしました。

 そういえば今年、山鉾巡行の鬮取(くじとり)で一番を引き当てたのは孟宗山でした。赤飯を炊くほどの慶事と聞きますが「うちは人手不足だから、叱られるかもしれない」と「果報者」は語ったそうです。

   鬮取の一番引いて叱らるる

 どうなったかしら。気になるところです。

(高田 正子)

「初めての俳句・短歌」では、日本経済新聞土曜夕刊の連載「耳を澄まして あの歌この句」(社会面)に連動して、毎回、季節に合った写真に短歌や俳句を添えます。歌人の大辻隆弘さんと、俳人の高田正子さんが歌や句の背景、技法についてわかりやすく解説します。

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