2010年3月の日経新聞電子版スタート以来、ライフでは、毎週金曜日に最新映画のレビュー記事を掲載してきました。このコーナーで紹介した映画の中で、2010年によく読まれた記事トップ20を紹介します。電子版読者が興味を持った作品はなんでしょうか?
1位「東京島」
無人島生き抜く1人の女と男たち
2008年の谷崎潤一郎賞を受賞した、桐野夏生の小説の映画化である。ストーリーのヒントとなったのは、ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督が、「アナタハン」(1953年)として映画化し、有名になった、太平洋戦争中から戦後にかけての実話だろう。無人島で、一人の女性と多数の男性が、ともにサバイバルしてゆく情況(じょうきょう)で、何がおこるか。興味をひかれずにはいられないシチュエーションである。この映画のヒロイン、清子(木村多江)は……
2位「悪人」
追い詰められる弱者の悲しみ
吉田修一の新聞連載中から評判だった同名小説を、著者と「フラガール」以来4年ぶりになる監督の李相日が脚色、映画化した。殺人を題材にしても、その罪を問うのではなく、弱者が追い詰められていく悲しみを色濃く漂わせている。老いた肉親の世話と過酷な肉体労働の日々。癒えることのない孤独の中で、若い娘の暴言にキレて殺してしまった土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、紳士服量販店で黙々と働く馬込光代(深津絵里)との出会いの後で……
3位「十三人の刺客」
旧作しのぐクライマックス
将軍の弟で明石藩主、松平斉韶(なりつぐ)は、残忍暴虐なふるまいが、暗君の域をはるかにこえていた。その彼が、来年には老中職につくという。天下はどうなるのか。老中、土井大炊頭(おおいのかみ)(平幹二朗)は、公儀目付、島田新左衛門(役所広司)に密命を下す。斉韶を殺せと。将軍の弟を、侍たちが暗殺するという、破格なアイデアの時代劇。1963年、東映時代劇が曲がり角にあったころに生まれた「集団時代劇」の傑作「十三人の刺客」(工藤栄一監督)の……
4位「借りぐらしのアリエッティ」 床下の宇宙、説得力ある描写
スタジオジブリの新作アニメーションである。メアリー・ノートンの児童文学を、宮崎駿が1950年代のイギリスから現在の日本に舞台を移して脚本化。古い家の床下に暮らす小人の一家を中心に、その娘と人間の少年との心の交流を温かく描いている。東京近郊にある大きな古い屋敷。広い庭には草木が茂り、小さな森もある。その家の床下に小人の一家が住んでいる。父親(声は三浦友和)と母親(大竹しのぶ)、そして14歳になる少女アリエッティ(志田未来)の……
5位「キャタピラー」 戦時下の夫婦、強烈なドラマ
今年のベルリン国際映画祭で寺島しのぶが最優秀女優賞を受賞した話題作だ。「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」(2007年)の若松孝二監督作品。「1940年日中戦争」の字幕があり、戦闘の記録映像がモンタージュされてから、日本兵が中国人の女性を追いつめて、犯し、銃剣で刺殺するシーン。この映画の主人公の黒川久蔵(大西信満)である。場面かわって、時間経過の字幕はないが(脚本を参照したところ、「昭和19年春」、つまり4年後)……
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