トヨタ、連続最高益
「稼ぐ力」を分析

スクロール

 トヨタ自動車が8日発表した2015年3月期の連結決算は、営業利益が2兆7505億円と前の期から20%増えた。

 トヨタグループの世界販売台数は2014年に1000万台を突破して、12年から3年連続でトップを維持している。リーマン・ショック後は2009年3月期に4610億円の営業赤字に陥ったものの、その後、国内外で生産、開発、調達、販売などの体制を抜本的に見直してきた。 お家芸である「カイゼン」によるコスト削減は累計で2兆円規模にのぼり、「稼ぐ力」を磨いてきた。

 ライバルである独フォルクスワーゲン、米ゼネラル・モーターズ(GM)との販売競争が激しくなっており、成長市場である新興国を舞台にしたシェア争いも注目される。国内勢を含めた完成車メーカーの収益力を比較した。

ライバルの群を抜く収益力

トヨタ
GM
VW
現代自動車
ホンダ
富士重工業
BMW

 トヨタ自動車のグループ世界販売台数(ダイハツ工業と日野自動車を含む)は2014年に1023万台だった。2位が独フォルクスワーゲン(VW)、3位が米ゼネラル・モーターズ(GM)と続き、トヨタに僅差で迫る。各社とも生産能力の大増強を計画しており、猛烈な接戦が予想される。

 もっとも、トヨタは単純な規模だけでなく、収益力の高さも際立つ。本業での稼ぐ力である営業利益率、株主が出資した資本金や稼いだ利益をどれだけ活用したかを示す自己資本利益率(ROE)を比較すると、性能やデザインが違うクルマのように各社の特徴が浮かび上がる。

続く北米依存、迫力欠く新興国

         
         

 世界の自動車市場は拡大が続く。国際自動車工業連合会(OICA)によると、14年の世界の新車販売台数は9000万台に迫っており、5年前と比べて約2割伸びた。成長を支えるのは中国をはじめとする新興国マーケットだ。

 トヨタの販売台数(トヨタ、レクサスブランド)は課題である北米偏重が依然として目立つ。最大市場である中国ではシェアが4%にとどまり15~16%を占める独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラル・モーターズ(GM)に先を越される。トヨタは新興国市場で足場が弱く伸び悩んでおり、攻略が次の飛躍へのカギになる。

「カイゼン」健在、円安も追い風

日付 売上高 営業利益
(億円)
純利益
(億円)
設備投資 減価償却費
(億円)
研究開発費
(億円)
原価改善
(億円)

 13年4月に掲げた「新工場建設の凍結」を解除し、メキシコと中国・広州に新たな生産拠点を設けることを4月に発表した。両工場をあわせた投資額は約1700億円。収益改善に注力するため、設備投資、研究開発費を絞った経緯がある。生産能力増強に加えて、燃料電池自動車など新技術でリードする資金を積み増しており、「守り」から「攻め」の姿勢を鮮明にしつつある。

「意思ある踊り場」の先

 「意思ある踊り場から実践するフェーズに」(豊田章男社長)。トヨタは単純に規模だけを追い求めない経営方針をあえて掲げてきた。リーマン・ショック後に、過剰な生産能力が痛手となって、巨額赤字に陥った教訓からだ。利益水準を過去最高に戻しながらも、「新工場建設の凍結」など積極投資をあえて控えてきた。

2015年以降、世界の新車販売ランキングでも苦戦を強いられそうだ。生産能力の増強を見合わせてきたこともあり、競合メーカーとのシェア争いでは劣勢になる。徹底した収益改善、「原点回帰」と呼ぶものづくりの改革を優先してきた代償といえる。

「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)」と呼ぶ従来にない設計手法の導入に取り組む。クルマの基本構造である車台(プラットフォーム)を絞り込んだうえで、部品を中長期に渡って共通化して採用していく構想だ。そのため製造ラインも使い回せて万能となり、モデルチェンジを繰り返すほどコスト削減効果が高まる。最終的には開発期間が2割以上縮まり、新車生産のための設備投資をほぼ半減させる考えだ。

こうした大がかりな改革がしっかり成果を出せれば、規模、需要変動にも強い収益力が「両輪」となってうまく回るスタイルを確立できる。製造業で新たな成長モデルを模索していく未知のステージに足を踏み入れる。

中国・広州にある組み立て工場の生産能力を増強する。

取材:森園 泰寛
データ出典:調査会社フォーイン、米調査会社ファクトセット、各社決算資料