(2012年2月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは先日、英国債のトリプルA格付けの見通しを「ネガティブ(弱含み)」に変更した。この変更は重要か。答えはノーだ。ムーディーズは、見識のある人が知らないことは何も語っていない。つまり、英国は多額の財政赤字を出しており、公的債務が増え、マクロ経済的な苦境にあるわけだ。
■公的債務の削減には成長が必要
ムーディーズの警告の意義は、政府が現在出している財政赤字ではなく、長期的な展望にある。ケンブリッジ大学名誉教授のロバート・ニールド氏は、英国王立経済学会の会報で「無意味な警戒論で正当化された、大戦間の予算均衡政策の再適用が、我々を不必要に深刻な景気後退に追い込んでいる」と指摘した。全くもって正しい。
教授はこうも書いている。「政府の財政管理のリーダーである英国は、3世紀以上にわたって、デフォルト(債務不履行)に陥ることなく国家債務を維持してきた。国内総生産(GDP)に対する債務比率は、現在よりずっと高いことも多かった」。なぜ大勢の人は、この成功の歴史はほとんど意味がないと見なし、ユーロ圏内のギリシャやイタリアの悲惨な経験の方がはるかに意義深いと考えるのか。
もっとも英国の歴史から明らかなのは、公的債務の管理に成功する必要条件は経済成長だということだ。例えば、1920年代初頭の大幅な歳出削減は、その後経済が崩壊したため、対GDP債務比率を引き下げられなかった。この点は、ムーディーズの分析と一致している。同社は将来の英国の経済成長に弱さを招く要因も強調していた。
■企業と対外部門で財政赤字を相殺
政府の対策は、2016~17年度までに財政赤字をGDP比で8.1%削減する見通しだ。どうやって政府は力強い経済成長とともに、これほど大規模な財政再建を達成するのか。原則的には答えはシンプルだ。政府部門の赤字削減を相殺するために、経済のその他部門、すなわち、家計、企業、対外部門で資金余剰の大幅減が起きなければならない。
こうした変化は、所得の激減を通じて起きてはならない。必要な調整をもたらす方法として、破滅的なうえ持続不能だ。一連の収支の変化は所得の減少ではなく、従来より低い貯蓄の水準と、特に投資に対して大きい支出の増加によって実現しなければならない。焦点は、こうした変化をどのように起こすかだ。
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