(2012年2月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
企業が中国経済が好調であるよう願うのは、中国への輸出を増やせるからではなく、中国からの輸出が減るからという時もある。
■ミタルの中国での生産・販売はごくわずか
鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)を例に挙げてみたい。同社の昨年の売上高は前年比20%増の940億ドル、粗鋼生産量は9190万トンに増えた。同社と鉄鋼世界2位の河北鋼鉄集団(中国)との差は歴然だ。今年開催されるロンドン五輪のやり投げで、金メダリストが銀メダリストの2倍の距離を投げるようなものだ。
だが、すべてが順調というわけではない。アルセロール・ミタルの創業者ラクシュミ・ミタル最高経営責任者(CEO)は平静を装っているが、同社は中国でほとんど鉄鋼を生産・販売していない。中国政府は外資系鉄鋼メーカーが国内大手の株式の過半を取得しないよう規制しているため、中国での鉄鋼生産の割合が約7%にとどまるアルセロール・ミタルは、小規模の2社との合弁事業で満足しなくてはならない。
しかも、中国は国別の鉄鋼生産量で首位で、2位以下との差は毎年広がっている。世界鉄鋼協会(WSA)によれば、中国の昨年の粗鋼生産量は6億9550万トンで、世界の生産量の45.5%に及んだ。2006年には、中国の粗鋼生産量は4億2100万トンで、33.7%を占めるにすぎなかった。
注目すべきは、世界2位の日本の昨年の鉄鋼生産量がわずか1億760万トンにとどまったという事実だ。言い換えれば、やり投げで金メダリスト(中国)が銀メダリスト(日本)の6倍の距離を投げたようなものだ。
■中国の需要拡大望む
世界の鉄鋼生産量の約6%を生産しているアルセロール・ミタルにとって、これは厄介な傾向だ。中国での生産急増による値下げ圧力に悩まされることなく、世界での市場シェアを守ろうと同社は必死で努力している。だが、中国の鉄鋼各社も製品をどこかで売らなくてはならない。
アルセロール・ミタルにとって最も望ましいシナリオは、中国が今年も高い経済成長を達成することだ。そうなれば、中国での生産増加の大半が国内で吸収され、アルセロール・ミタルのシェアを奪おうとする中国各社の動きに歯止めがかかる。同社は意味もなく今年の中国の経済成長率が8%に達するよう期待しているわけではない。
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