夏の食卓を彩る果物の1つ、ブドウで世代交代が急速に進んでいる。粒が大きく見栄えがするため、贈答用に重宝されてきた代表品種、「巨峰」は長くブドウの王様とされてきた。その地位を脅かしているのが、ここ数年、市場取扱量が急増している「ピオーネ」だ。
ピオーネ取扱高16%増、巨峰は13%減
「巨峰の取扱量を減らしている」。高級果物店の新宿高野(東京・新宿)の担当者は明かす。食べやすいため、種なしを好む消費者が増えていることが理由だ。もちろん、巨峰にも種なしはある。だが、種なし処理を施すと実が落ちやすくなる欠点がある。ピオーネの実の大きさは巨峰と同程度で、種なし処理しても形がいい。「実が落ちにくく房全体が整った形に仕上がる」(新宿高野)。贈答用を中心に果物店からの人気が高まっている。
東京都中央卸売市場のピオーネの取扱金額は09年が約15億円で07年から16%増えた。13%減少した巨峰とは対照的だ。単価も1キロ759円と巨峰より1割ほど高い。金額ベースではまだ巨峰の4割程度だが、「いずれ逆転する」(仲卸)との声も聞かれるようになった。
種なしで皮ごと食べられる種類も
種がなく、皮ごと食べられる「ナガノパープル」と「シャインマスカット」など、次世代品種も育っている。4~6年前に品種登録され流通量はまだ少ないものの、食べるのに手間がかからず手も汚れない。東京都内では種なし巨峰よりも2~3割高い価格で販売されているが、ある都内スーパーでは「店頭に置けば売り切れることが多い」という。
食べやすさだけでなく、消費者の味の好みの変化にもマッチしている。シャインマスカットは、「欧州種独特のさわやかな香りを好む消費者にぴったり」。開発に携わった、独立行政法人、農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所(茨城県つくば市)の山田昌彦・研究支援センター長は話す。新宿高野でも「リピーターが増えている」という。
果物消費量、10年前の8割に
リンゴは戦前から1950年代にかけて一世を風靡(ふうび)した「紅玉」「国光」を店頭で見ることは少なくなり、「ふじ」や「つがる」が主役に変わった。巨峰も商標登録されてから50年を超えた。消費者の好みの味も変化する。ブドウも世代交代は宿命かもしれない。
次のエースにはブドウ人気を盛り返す役目も期待される。日本人の果物消費量は10年前の約8割に減少。ブドウ市場もしぼむ一方だ。農林水産省によると、2009年の全国の卸売市場の取扱金額は10年前の約7割に落ち込んだ。ブドウの新しい主役が巻き返しの原動力となるか――。青果卸最大手の東京青果(東京・大田)の担当者は「新品種や健康面で見直され、消費回復の糸口になってほしい」と話している。
(商品部 杉本耕太郎)
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