1回140文字以内の「つぶやき」がインターネット上を行き交い、世界中で利用者を増やすツイッター。新種の投稿コミュニケーションは経済、社会に何をもたらすのか。携帯電話を使ったデータ通信サービス「iモード」の生みの親、夏野剛・慶大大学院特別招聘教授は、知的な刺激を受けられるプラス面を認めつつ、過大評価は禁物と説く。
僕自身つぶやいているが、すごく面白いツール(道具)だと思う。ふつう自分の意見というものは、よく考えてから話さないと誤解を招くかもしれず危険じゃないですか。過激な思想を持っているのではと疑われたりして。その点ツイッターなら、しっかり固まっていない考えを出しても怒られない。思いつきでのつぶやきだとみんなが認識してくれているからだ。
浅はかな考えかもしれないけれど、それに対するほかの人の意見を聞いてみたいと思うことってありますよね。それが24時間、場所を選ばずにできる。しかも僕のつぶやきに注目してくれるフォロワーは、僕の知らない人の方が多い。そういう人たちの反応が分かると、知的探索、知的思考を深めていくのにとても役立ちます。こんな意見もあるんだなあと。その結果、自分の考えがまとまったり、反省したりする。
ブログに自分の意見を書こうと思ったら、「よし頑張るぞ」と気合を入れないとできない。ツイッターであれば、今日思ったこと、ニュースで感じたことをとりあえず電車のなかでも書ける。しょせんつぶやきだから「もし間違っていたら、ごめん」という緩い感じ。文章を推敲してどうこうじゃないのがいい。逆に、考えがまとまって論理体系が固まったものは140文字じゃとても表せない。
有名人や、フォロワーが5千人、1万人を超えるような発信者ではない一般の人たちにとってのツイッターは、人間関係をサポートするツールになっていると思う。自分が今、何をしているのか友達に知らせる方法はかつて電子メールだったけれど、今はツイッターのほうが便利だ。「今日、渋谷」「私も行く」「じゃ会おうよ」と。
夏野氏はほかの人のつぶやきに耳を傾けるフォロワーでもある。注目するのは孫正義ソフトバンク社長のつぶやき。坂本龍馬を信奉する孫氏はNHKの大河ドラマの大ファンで、毎週放送が近づくと興奮気味のつぶやきが増える。一方で孫氏は顧客の要望をツイッターで吸い上げ、自社サービスの改善にも生かす。
ほかの人がつぶやくのをフォローしていると、その人に対する別の見方が生まれることがある。孫さんの場合が一番いい例で、フォローすることで孫さんのキャラ(個性)がそれまでとは違って、身近に感じられるようになる。(大河ドラマの放送については)「先発隊行けーっ!!」とか、意味がつかみにくいつぶやきも多いけれど、そういう孫さんの勢いがソフトバンクの活力になっているんだと分かる。
僕は個人的にも孫さんのことを存じ上げているけれど、孫さんを知らない人は「悪人で金もうけばかり考えている」などと思っているかもしれない。でも実際はピュア(純粋)な心でやっている人な訳ですよ。そういう孫さんの様子がタイムリーに共有できる。後から振り返る自伝とかではなくて。リアルタイム性がツイッターの根本にある。
孫さんは顧客の声を直接、自分でとるツールとしてもツイッターを使っている。今までは部下に任せないと拾えなかった声が拾えるようになった。ツイッターそのものは企業のマーケティングに使えるとか、そこまで深く考えて作られたものではないと思う。すべてのIT(情報技術)はツールであり、使い方次第で生かせる場合も、生かせない場合もある。ITの進化を理解していると孫さんのように使いこなせる。
海外にいても現地からつぶやくなど、夏野氏はツイッターの熱心な利用者。それでも万能型のメディアだとは思っていない。
ツイッターには危険なところもある。たくさんのフォロワーを抱える人ほど気をつけないといけないのは、フォロワーの多くは自分に関心を持ってくれている賛同者、サポーターであるという点だ。そもそも嫌いな人、意見の合わない人をフォローしようとは思わないものね。(情報の発信者とフォロワーの関係にはそうした偏りがあり)人々の「本当の反応」はつかみにくいメディアだ。
僕のフォロワーは1万5千人いて、1万人を超えるとマス(大集団)といえるが、僕を支持する側に立つ人たちのコミュニティーだということを忘れてはならない。僕のつぶやきに対して批判的なコメントも来るが、やはり前向きなコメントの方が多い。これを「民の声」と勘違いすると、だんだん「オレの言うことは正しい」と裸の王様になってしまう。
ツイッターですべてが変わるとか、メディアがいらなくなるとか言っている人が結構いるけれど、それはちょっと違うなあ。
(聞き手は電子報道部 村山恵一)
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