ものづくり進化論(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

トルコへ原発輸出、三菱重に影落とす巨額賠償問題
編集委員 安西巧

(4/4ページ)
2013/11/11 7:00
共有
印刷
その他

 同原発の事業母体である南カリフォルニア・エジソン社(SCE)は再稼働を目指したが地元住民らの反発で断念。今年6月に2基の原発の廃炉を決め、損害賠償を三菱重工に求める方針を通告してきた。10月半ばに明らかになったSCEの賠償請求額は40億ドル(約3900億円)。三菱重工は「不適切な内容で根拠がない。契約上の責任上限は1億3700万ドル(約135億円)だ」と反論しており、双方は国際的な仲裁機関である国際商業会議所(パリ)で争う構え。

「いまの原子力は『国家事業』だ。つまり商業的には成り立たない」と指摘するジェフ・イメルトGE会長
画像の拡大

「いまの原子力は『国家事業』だ。つまり商業的には成り立たない」と指摘するジェフ・イメルトGE会長

 三菱重工のみならず、原発メーカーにとって衝撃だったのは、契約で定めた賠償の上限を超えた金額を請求されたことだろう。この件では米原子力規制委員会(NRC)も今年9月、三菱重工が細管の摩耗を予測するシミュレーションで使用した「コンピューターモデルが不適切だったことが、蒸気発生器の設計の欠陥につながった」と文書で指摘している。海外の原発プロジェクトでいったんトラブルや事故を起こせば、国民の関心が強いだけに、官民そろって責任追及に動くという現実を原発メーカーは見せつけられた。

 サンオノフレのケースは原発先進国の米国が舞台であり、交換用部品の納入がトラブルの端緒だったが、昨今の日本勢が受注活動に熱心な欧州やアジア、中東の原発市場では事業母体に出資を余儀なくされたり、数十年間の運転保証を求められるなど、各社が背負うリスクは膨らむ一方だ。

 インドでは9月に法務長官が原発事故による損害賠償の請求権について「行使を希望するかどうかは原発の運営者が決められる」との法解釈を示し、同国での原発推進のネックになっていた「厳格な製造物責任の追及」が緩和されたと歓迎する声が世界の原発関係者の間に広がった。ただ、この発言がインドでの原発ビジネスのハードルを下げることになるというのは早計かもしれない。いったん深刻な事故が起き、多大な犠牲者が出れば、責任追及は“政治”の色彩を帯びてくるからだ。

■「原子力事業、商業的には成り立たない」

 運営者がトラブルや事故を起こした原発のメーカーに寛大な対応をすることは考えにくい。国民感情を考慮するなら、メーカーが外国企業の場合は特にそうだろう。サンオノフレのケースでいえば、運営者は巨額の賠償請求を突きつけたSCEであり、監督当局のNRCも同調している。三菱重工の責任追及には地元カリフォルニア州選出の上院議員も暗躍した。

 原発ビジネスはセールスからリスク管理に至るまで政治の関与がますます不可欠になりつつある。

 「いまの原子力は『国家事業』だ。つまり商業的には成り立たない」(10月10日付日本経済新聞朝刊「真相深層」)

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフ・イメルト会長兼最高経営責任者(CEO)のこの指摘は確かに的を射ている。日本政府や原発メーカーの経営者はどう解釈するだろうか。


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

ものづくり進化論をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
共有
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

チェルノブイリ27年後の転機

【PR】

ものづくり進化論(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

セダンは寄居完成車工場(埼玉県寄居町)で生産する

個性磨いた新シビックでグローバル車開発改革 ホンダ [有料会員限定]

 ホンダは9月、世界販売の主力車種「シビック」を日本で発売する。国内では販売が低迷し2011年にラインアップから外したが、6年ぶりに復活する。今回投入する10代目はデザインなどで主要市場の米国の嗜好を…続き (8/14)

同じ形の機械はマーカーを付けて区別。タブレットで認識させると点検記録や動画の操作マニュアルなどが呼び出せる(愛知県東浦町)

カリモク家具がAR活用して設備保守 若手も独り立ち [有料会員限定]

 家具メーカーのカリモク家具(愛知県東浦町)は工場の製造設備の保守作業に拡張現実(AR)技術を活用したシステムを導入した。タブレットを機械にかざし、表示されたボタンを押すと稼働状況や操作マニュアルをす…続き (8/7)

鈴鹿サーキットでの自動車レース「S耐」に参加した日産・自動車大学校の学生ら(6月、三重県鈴鹿市)

整備士の卵にプロ意識 日産、耐久レースで育成 [有料会員限定]

 若者のクルマ離れが、自動車メーカーの国内事業に影を落とすようになっている。とりわけ車検や生産現場などを担う自動車整備士を志す若者の減少は歯止めがかからない。販売網の維持に苦戦する地域があるばかりでな…続き (7/31)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

08月17日(木)

  • 「Googleクビになったけど質問ある?」多様性問題のエンジニア、Redditに登場
  • マツダが内燃機関の進化にこだわりつつトヨタとも提携する理由
  • アマゾンの人工知能スピーカーは「盗聴器に早変わり」する―セキュリティ研究者が実証

日経産業新聞 ピックアップ2017年8月17日付

2017年8月17日付

・ペイパル、金融やITの大手と提携加速
・無線で電気供給、活躍の場広げる パナソニックなどが技術開発
・埼玉大、空中のボールの動きを再現 磁力で触れずに回転
・IoT導入、中小に優しく シチズンマシナリーが新サービス
・サイバー・バズ、社長と釣りして遊ぶインターン 学生、親も同伴で…続き

[PR]

関連媒体サイト