日本サッカー世界への挑戦(五輪編)

引き分け狙い…なでしこ、フェアプレー精神はどこへ
サッカージャーナリスト 大住良之

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2012/8/1 7:00
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南アフリカ戦の後半、選手に指示を出す佐々木監督(中央)=共同

南アフリカ戦の後半、選手に指示を出す佐々木監督(中央)=共同

 1968年のメキシコ・オリンピックで、日本を率いていた長沼健監督が準々決勝で地元メキシコと当たらないようにするため、グループリーグ第3戦のスペイン戦で引き分けを指示したことはよく知られている。

メキシコ五輪で長沼監督が指示したが…

 その試合の後半途中、湯口栄蔵選手を送り出すとき、長沼監督は「点を取るな、このまま0―0の引き分けに持ち込めとみんなに伝えろ」と指示した。狙いどおりに0―0で引き分け。準々決勝でフランスと当たった日本は3―1で快勝して、銅メダル獲得の大きな足がかりとした。

 だが、メキシコ・オリンピックのときの日本代表は、世界の男子サッカーでまったくのアウトサイダーだった。日本で生中継があったわけでも、少年少女を含めた国民の何分の一かが見守っていたわけでもない。

 まして「引き分け狙い」は国際的には伝わることはなく、帰国してから長沼監督が初めて明かしたことだった。

■「後半の途中に引き分けを選んだ」

 しかし、ロンドン五輪での女子日本代表(なでしこジャパン)はまったく立場が違う。前年の女子ワールドカップを制した世界チャンピオンであり、カーディフには何千人もの日本人ファンがつめかけていた。

 日本でも眠い目をこすりながら数多くの少年少女が期待に胸をときめかせて見守っていたに違いない。

ロンドン五輪 サッカー女子1次リーグ
F組















スウェーデン
日 本
カナダ
南アフリカ-6

※スウェーデン、日本、カナダは準々決勝進出
 1、2位は得失点差による

 そして、佐々木則夫監督の会見はすべて英語に訳され、世界に伝えられる。「2連敗のあと、世界チャンピオンに引き分けることができて、私は選手を誇りに思う」とコメントした対戦相手、南アフリカのムクホンザ監督や選手たちは、佐々木監督のコメントを聞いてどう感じただろうか。

 何より、なでしこジャパンと同義語ともいえた「フェアプレー」の精神はどこへ消え去ってしまったのか。そしてまた、相手チームに対する「リスペクト」は……。

 佐々木監督は、試合後の記者会見でこうはっきりと語ったのだ。

 「準々決勝の相手はどこでもいい。ただ、1位ならグラスゴーへの移動、2位ならここカーディフに残って試合ができる。コンディションを考え、後半の途中に引き分けを選んだ」

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