ポイントは、ゲームを通じて作られる「ユーザーが生み出したデータ」や「個人的なデータ」、「コミュニティーのデータ」といったものは、決して再生できない、その場限りのユーザーの経験である。だからこそ、一人ひとりにとって大きな価値を生み出すという意味だ。一方で、そうした経験価値は、ゲームを通じて作り出されるものでありながら、「そこから収益モデルを生むのは容易ではない」(和田氏)。
既存のパッケージゲームでは、ハードの高性能化によって、本来、ユーザーが価値を感じる本質的な部分以外の領域に力を注いできた。
もっと高性能なハード、もっと大量のデータ、もっとたくさんの面のバリエーション――。しかし、一定のハード性能を越えてしまうと、ユーザーがゲームを楽しむうえでは、「余分なパワー」「余分な量」に変わってしまう。そこまでを求めないユーザーは汎用化したもので満足し始める。スマートフォンやソーシャルゲームの台頭は、企業とユーザーの間の価値観のずれを背景にしていると示唆していた。そして、「これは第1波が来たに過ぎなくて、これから、第2波、第3波が来るだろう」(和田氏)と述べていた。
過去、新しいサービスが急激に世界に広がるパターンには法則がある。コンピューティングパワーが余分になり、過去のコンピューターでは展開が難しかったサービスが可能になったときに起きるのだ。
今年は、和田氏が指摘していた「収益化が難しかった部分」に課金をすることに成功したソーシャルゲームの台頭が決定的になった年。同時に「PS Vita」と「ニコニコ動画」の提携のように、ユーザーが感じる経験価値をゲーム専用機が生み出せる方向性も出ていた。今年の東京ゲームショウからは、こうした新しい流れの端緒がしっかりと見えてきた。
新清士(しん・きよし)
1970年生まれ。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲーム会社で営業、企画職を経験後、ゲーム産業を中心としたジャーナリストに。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表、立命館大学映像学部非常勤講師、日本デジタルゲーム学会(digrajapan)理事なども務める。
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