被災地の「声」を拾うクラウド 奮闘するエンジニアたち

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2011/5/13 7:00
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 東日本大震災発生から2カ月。避難所で暮らす被災者は現時点で12万人規模に達し、日本の1000人に1人に相当する人々が不自由な生活を余儀なくされている。食物アレルギーや難病患者、高齢者、外国人も多く含まれ、必要とする特別な「ニーズ」と、供給される物資やケアなどのミスマッチが深刻な問題になっている。これを解決するため、非営利団体と富士通が立ち上げたクラウドシステムが動き始めた。

■避難所の「生の声」を拾い上げる

池上さんのアドバイスに聞き入るつなプロのボランティアたち(4月22日、宮城県登米市香林寺)
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池上さんのアドバイスに聞き入るつなプロのボランティアたち(4月22日、宮城県登米市香林寺)

 4月22日、宮城県登米市。市街地から車で30分ほどの小高い丘の谷間に香林寺はあった。夜の10時近くにもかかわらず、若者15人が集まり車座で話し込んでいる。真ん中に座る池上貴之さん(25)の声が響く。「とにかく避難所のニーズを細かく聞いてよ。管理者が『分からない』と言っても、引き下がらないで。データベースを空白にしないようにね」――。

 池上さんは「つなプロクラウド」を使って、特別なケアが必要な被災者のニーズと、支援者のマッチング(需要と供給の調整)を担当する主要メンバーだ。せっかくの支援も、被災者のニーズに合わなければ無駄になる。必要な支援を適切な相手に届けるためには、被災者の実情を現場で聞き出すことが欠かせない。だからこそ池上さんは、ヒアリング担当者へのアドバイスに力を込める。

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 「つなプロ」の正式名称は「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」。複数の非営利組織(NPO)と日本財団などが連携して、「災害関連死」を防ぐことを目的に設立された。

 阪神大震災の死者6436人のうち、避難所などで必要なケアを受けられずに亡くなった「災害関連死」はおよそ900人と言われている。東日本大震災でも同様の問題は起きており、高齢者や外国人、難病患者など細かな支援を必要とする人々への対応が急務となっている。「つなプロクラウド」は、こうした課題を解決する狙いで作られた。

 ヒアリング担当者が避難所をくまなく回り、被災者の健康状態や必要とされている食料、物資、ケアを、避難所管理者に聞いてシステムに入力。物資の配布やボランティアを派遣する部隊はこれを見て、きめ細かい支援プログラムを策定。特殊なスキルを持つNPOなどの支援団体を割り当て、現地に最適な人材や物資を届けるという仕組みだ。

集めてきたニーズを、つなプロクラウドに入力する(4月22日、宮城県登米市香林寺)
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集めてきたニーズを、つなプロクラウドに入力する(4月22日、宮城県登米市香林寺)

入力状況を確認する池上さん。一般企業を経て、現在はつなプロの専任メンバー
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入力状況を確認する池上さん。一般企業を経て、現在はつなプロの専任メンバー


 システム構築は、富士通の社員が全面的にサポート。「注意欠陥多動性障害(ADHD)らしき子供に臨床心理士を派遣したら自閉症と判明し、より適切なケアができた」「避難所で数週間働きづめで体調を崩した看護師の交代要員を派遣、避難所の看護師不在を免れた」――。こんな実績が出始めている。「要望を言うとすぐに富士通のエンジニアがシステムを改良してくれた。分析プログラムや項目抽出機能は、効率的なマッチングに役立った」と池上さんは語る。

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