移動の楽しみ再発見 大人がはまる携帯向けゲーム「コロプラ」

2009/4/16 7:00
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コロプラは自分の街に建物や農場を作り、発展させるゲーム

コロプラは自分の街に建物や農場を作り、発展させるゲーム

 3月下旬、栃木県日光市の老舗煎餅店「石田屋」に突然若者たちが押し寄せた。片手に携帯電話を握り締め、煎餅を買って帰っていく。彼らはコロプラ(東京・渋谷、馬場功淳社長)が運営する携帯電話向けゲーム「コロニーな生活☆PLUS(通称コロプラ)」のプレーヤーだった。

街をつくり、アイテム集める

 コロプラは、プレーヤーがコロニーと呼ばれる空間に自分の「街」を持ち、建物を建てたり、水や食料を確保したりして発展させるゲーム。基本的な仕組みはプレーヤーが市長となって仮想都市を開発する「シムシティ」に似ている。大きく違うのは、ゲームを進行させるためにプレーヤーが実際に移動しなければならないということだ。

 コロニー内の土地や建造物は、ゲーム内通貨「プラ」を払って購入する。プレーヤーが携帯電話のGPS機能などで位置情報を登録すると、前回登録した場所との距離が「移動距離」と認められプラに換算される。長い距離を移動したり、こまめに位置登録をするほどプラがたまってゲームを有利に進められる。

 ゲームには5000種類のアイテムが用意されており、街づくりに使ったり収集して楽しんだりする。特に人気のアイテムが、実際にその地域にいるときにしか購入できない地域限定の「お土産」だ。例えば「江戸前寿司」や「東京のおいしい水」は東京にいる時にしか買うことができない。全国のお土産を集めることがプレーヤーの目標の一つになっている。

日光の煎餅店と組んだ企画では実在する商品をゲームのアイテムにした。現地に行かないと購入できない

日光の煎餅店と組んだ企画では実在する商品をゲームのアイテムにした。現地に行かないと購入できない

 日光の煎餅店にプレーヤーが集まったのはその貴重なアイテムを獲得するためだ。3月25日から「石田屋」の半径1キロ以内で位置登録をしない限り入手できないお土産を追加した。それが「日光甚五郎煎餅」。実在する人気菓子で、石田屋はプレーヤー向け商品も用意した。ゲームでも店舗でも「お土産」を買ってもらおうという、コロプラ初の企画だった。

 石田屋にはすでに400人を超えるプレーヤーが訪れ、たくさんの煎餅を購入して帰っていったという。石田屋の石田雅一氏は「普段はあまり見かけない若い人たちがたくさん来てくれた。遠くは大阪から来た人もいた」と驚きを隠さない。実は石田氏自身もコロプラのプレーヤー。店の近くで位置登録をした人に店の広告を表示できないか、と持ちかけたのがきっかけで今回の企画が実現した。

趣味のサイトが予想外に広がる

 コロプラの歴史は意外と長く、スタートしたのは2003年5月。2008年の途中までは現コロプラ社長の馬場氏がグリーなどでプログラマーとして働きながら、無料で運営する個人のサイトだった。クチコミで利用者がじわじわと増えていたが「あくまで趣味のサイトにとどめるつもりだった」と馬場社長は話す。というのも「小規模で運営したほうが、コミュニティーが荒れずに会員を大事にできる」と考えたからだ。

馬場社長は九州工業大学大学院博士課程在籍中にKLabに入社。2007年4月からグリーでアバターの開発などを担当した

馬場社長は九州工業大学大学院博士課程在籍中にKLabに入社。2007年4月からグリーでアバターの開発などを担当した

 ゲームを開発するきっかけとなったのが、2003年に発売されたばかりのPHS「エアーエッジフォン」だった。当時としては珍しいパケット定額制に対応しており、位置情報を発信する機能を備えていた。「この端末ならではの新しいことができないか」と馬場社長が1週間考えてできたのが、プレーヤーの移動と仮想都市を連動させたコロプラだった。「最初からほぼ、現在の形がイメージできていた」という。

 馬場社長は日中、会社員として働き、夜になるとコロプラのプレーヤーへの対応やサイト拡張の開発を続ける生活を送っていた。クチコミで会員の増加が続いたため、検索エンジンで上位に表示されないよう「逆SEO対策」をしたこともある。

 それでも、2007年ごろから携帯電話に位置情報を知らせる機能が標準的に搭載されるようになると、1万人程度だった会員は3万人ほどに急拡大。サイトの管理が追いつかなくなった馬場社長は事業化を決意した。

 当時、馬場社長はグリーでアバターの開発などを担当していた。グリーは上場準備中で「会員数はバンバン伸びていたし、仕事も楽しかった」と馬場社長は振り返る。退職を申し出ると「上場まで待ったら」と引きとめられたが、2008年5月にグリーを退社し10月にコロプラを立ち上げた。

不便が魅力、社会人がメーン

 なぜコロプラがクチコミだけで人気サイトになったのか。馬場社長はコロプラの魅力を「不便なところ」と分析する。たまに隕石が落ちてきて街を壊されたり、資源が足りないと住人が不満を言い出したりと、ゲームはスムーズに運ばない。また、アイテムの取引やゲームの進行のために他のプレーヤーと情報交換しようとしても、掲示板やメールで直接やりとりできるのは、そのときに同じ市町村にいる人のみ。だからこそ「いいことがあると、とても嬉しくなる」

 不便さがコミュニティーを健全にしているともいう。プレーヤーの名前は「第132263コロニー」といった番号で表示され、ニックネームや性別、年齢といった個人のプロフィルはない。相手をイメージしづらく覚えにくいが「プレーヤー同士の関係が現実社会に発展せず、出会い系として使われにくい」(馬場社長)という。

 一般の携帯向けサービスに比べ、プレーヤーの年齢層が高いのも特徴だ。アンケートを実施したところ、プレーヤーのうち9割が20代以上の社会人だった。「移動が多いキャビンアテンダントやトラックの運転手といった職種の人がたくさんプラを稼いで、街を発展させている例もある」と馬場社長。アイテムほしさに寄り道したり旅行するプレーヤーも少なくないそうだ。

 馬場社長は「コロプラを始めて移動することが楽しくなった、と言われることが多い」と笑顔を見せる。最近は若者が車を持たなくなり、お金がかからないレジャーとして携帯ゲームをする風潮があるが「コロプラをすれば、移動する楽しみを発見できる」という。

 日光の煎餅店に続き、地方の店舗やイベントと連携する企画の準備も進めている。商品販売や入場料などの一部を収入にする集客事業を軌道に乗せるのが当面の目標だ。「地方に若者が足を運ぶようになったら、地域経済の活性化にも役立つのでは」と馬場社長。コロプラのプレーヤー数はすでに11万人、月間ページビューは1億2000万に達する。近い将来、携帯電話を片手に地方の土産店を巡る若者をもっと見かけるようになるかもしれない。

[IT PLUS 2009年4月16日掲載]

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