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ソフトバンクのホワイトプラン「月額980円」の巧妙な仕掛け
ジャーナリスト 石川 温

2007/1/18 7:00
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 正月気分も抜けきらない1月5日に突如発表されたソフトバンクのホワイトプラン。月額980円という圧倒的な安さが話題だ。これまでの、付帯条件の多さや紛らわしい広告展開に批判を浴びたゴールドプランから一転。今度は、付帯条件や※印が一切ない、シンプルな料金体系に生まれ変わった。

料金プラン「ホワイトプラン」の説明資料の前に立つ孫社長=2007年1月5日、東京・汐留
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料金プラン「ホワイトプラン」の説明資料の前に立つ孫社長=2007年1月5日、東京・汐留

盛り上がりに欠けた緊急発表

 午前1時から午後9時まではソフトバンクの利用者同士の通話は無料。それ以外の時間は30秒21円、他社宛の通話はすべて30秒21円という具合。このほかの条件は全くないという潔さだ。

 これをMNP(番号ポータビリティー制度)商戦の目玉として、昨年10月23日に発表していたらと考えると本当に残念でならない。「低価格ADSLの再来」とばかりに、ソフトバンクに対する印象は大きく変わっていたはずだ。「さすが孫社長、ケータイ業界に料金革命を起こしてくれた」と消費者やマスコミから大絶賛されたことだろう。

 しかし、実際はゴールドプランでの混乱、システムトラブル、公正取引委員会による広告表現への警告など、企業イメージが大きく傷ついてしまった。

用意したプレゼン資料は1枚だけ=2007年1月5日、東京・汐留
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用意したプレゼン資料は1枚だけ=2007年1月5日、東京・汐留

 ホワイトプランの発表も、年明け早々の1月5日午後1時半頃に記者会見のお知らせが届き、2時間後の午後3時半から東京・汐留で開催するという、相変わらず「大人になりきれなかったソフトバンク」の性格が良く出たスケジュールだった。

 もし、つきあっている女性に「2時間後に来い」と急に言われ、自分勝手に振り回され続けたら、さすがに真剣に別れを考えようかと思う。

 なんだか、いまのソフトバンクはそんな状況に似ている。もう少し、常識ある日程設定をしてもらいたいところだ。

 マスコミも、新年早々で、通常の業務体制になっていなかったためか、ホワイトプランをきっちりと当日もしくは翌日に報道しているところは少なかった。月額980円というインパクトに反して、やや盛り上がりに欠けてしまっていた。

 果たして、そこまで緊急性をあおって記者会見を開いたことに、どれだけの効果があったのか、クビをかしげたくなるほどだ。

980円では済まないカラクリ

 1兆円を超える借金を背負っているなか、月額980円というプライスで勝負に出たソフトバンク。他社はどんなに安くても3500円程度のプランしかないだけに、この価格設定は驚異であるとともに「本当にこんな値段で大丈夫なの?」と心配もしたくなってくる。しかし、ソフトバンク関係者によれば「うちは借金をしているため、財務的な動きには、債権者の金融機関の承認がなければならない。今回のホワイトプランも、それら金融機関が綿密な計算をしたうえでOKを出した商品。なので、財務的な不安はほとんどない」と自信を見せる。

 確かにホワイトプランを検証していくと、必ずしも月額980円に収まらないカラクリが見えてくる。

 すでにユーザーなどのブログでも指摘されているが、同社の割賦販売制度である「新スーパーボーナス」と組み合わせてしまうと、どんなに通話をしなくても、月の支払いが980円ではなく3000円程度になってしまう欠点が見えてきた。

「911SH」
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「911SH」

 新スーパーボーナスは、ユーザーが端末代金を24カ月(もしくは12カ月か18カ月)の分割で支払う制度で、その一部をソフトバンクが「スーパーボーナス特別割引」として差し引いてくれるというもの。

 仮に最新のAQUOSケータイである「911SH」を新スーパーボーナスで購入し、ホワイトプランに契約した場合を見てみよう。他社宛メールなども一切使わず、無料通話時間だけ音声通話を使ったとする。当然、月額980円だけで済むかと思いきや、そうはならないのだ。

 「911SH」の月額割賦金は、24カ月払いの場合、3020円となっている。スーパーボーナス特別割引は、2280円を上限として、割賦金を割り引く。このため、

「基本料金980円」+(「月額割賦金3020円」ー「スーパーボーナス特別割引2280円」)=1720円

 で、月の支払いは1720円となるが、これも違う。

 スーパーボーナスの特別割引は月額割賦金ではなく、基本使用料、通話料・通信料、オプションの定額料といった総額から割り引く制度なのだという。基本料金のみで収めようとすると、980円しか割り引きを受けられないことになる。つまり、

(「基本料金980円」ー「スーパーボーナス特別割引980円」)+「月額割賦金3020円」=3020円

 どんなに使わなくても、最新のハイスペック機種を購入すると、このように3020円を支払わなくてはならないのだ。

 これを回避するには、新スーパーボーナスを使わずに、端末購入時に数万円を支払うか、月額割賦金の安い機種を買う、あるいは中古の端末を店頭に持ち込んでホワイトプランを契約する、といったことをする必要がある。

 当然のことながら、多くのユーザーはソフトバンク内の通話だけでなく、他社宛の通話やメールを行うだろう。さらに携帯電話会社はユーザーが発信して支払う通話料だけが収入源ではない。他社から受信した通話に関しても、他社から接続料を徴収できる。月額980円といっても、儲ける術はいくらでもあるのだ。

したたかなソフトバンクだが……

 ホワイトプランはそれ自体とてもシンプルであり、わかりやすい料金体系になっているものの、新スーパーボーナスを組み合わせると、かなり理解しにくいものになる。しかし、月額980円というわかりやすさでユーザーを集め、損しないような仕組みで、しっかりと代金を回収するスキームをつくったソフトバンクは実にしたたかだ。

 問題は、ユーザーが最新の人気機種を買おうとすれば、結局3000円以上の支払いになることをきちんと知ったとき、それに納得できるかどうかだろう。

[IT PLUS 2007年1月18日掲載]

〈筆者プロフィル〉 石川温(いしかわ・つつむ) 月刊誌「日経Trendy」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著に「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦」(技術評論社)など。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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