ネット企業、地方に活気 魅力発信アプリやオフ会企画

2013/8/10付
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 活気を失った地方都市をネットの力で元気にする試みが広がっている。主役は地元に本社を置くネット関連の中小企業。ふるさとに対する強い思いが動機だが、「難題山積の地方にこそ商機がある」と話す企業家も多い。スマートフォン(スマホ)の普及などで勢いづくネット企業が、高齢化といった難題を抱えるふるさとを舞台に成長の道筋を探っている。

 電子書籍の著作権保護ソフトウエアなどを手がけるサイファー・テック(徳島県美波町)は5月、東京から本社を吉田基晴社長の故郷である美波町に移した。

 理由は「人手不足」(吉田氏)。転職支援を手掛けるリクルートキャリアによるとインターネット技術者の6月時点の求人倍率は4.8倍で、1年前の3.3倍から拡大した。スマホアプリなどの需要が拡大しているためで、中小企業が都市部で有能な技術者を採用しにくい状態だという。

大学生も参加

 本社移転の一年前に事務所を作り地域貢献事業を開始。その一環として観光情報を紹介するスマホアプリを作成した。地元の人が大切にする神社仏閣など文化財だけでなく、町中を歩き回って隠れた街の魅力も開拓。就業体験にきた大学生も参加させ、アプリ「美波百景」を完成させた。

 一連の取り組みで吉田氏は「課題満載の地方の活性化にこそ大きな商機がある」と確信。本社を移転するだけでなく6月には自身で全額出資し、過疎地支援の専門会社「あわえ」も設立した。美波町を拠点に全国各地の活性化事業を手掛ける。ネット事業だけでなく企業誘致なども手掛ける。

 「あんたたちが来てから、町が元気になってきた気がするよ」。吉田氏は美波町の高齢者にかけられるこの言葉が元気の源だという。今後は地元の雇用拡大に貢献するのが目標だ。

 IT企業の誘致に力を入れる美波町にはサイファー・テックに続き、システム開発を手がける鈴木商店(大阪市)など4社が拠点を開設することを決めた。自然豊かな環境が社員の創造性を高めるのに適しているのだという。ネットビジネスが過疎の町の新たな活気を作り出し始めている。

 ブログのポータルサイトを運営するシーポイント(浜松市)はサイト利用者が実際に出会う「オフ会」を積極的に企画している。例えばネット上で話題となった食材をテーマにした会合を開き、地元食品メーカーも巻き込んで新商品開発につなげるといった内容だ。

地元の声生かす

 「ネットはあくまで入り口で、そこから具体的な出会いと事業を生み出すのが地方のネット企業の役割」と野沢浩樹社長。実際に試食会に参加した男性は「地元の人と地元の魅力を再発見できる」と話していた。4月にはブロガーが自由に会合を開けるように、本社に専用スペースを新設した。野沢氏は「地域活性化のアイデアを生む場であるとともに、地元の声を自社の事業改善に生かす場にしたい」と話す。

 企業の中国進出支援などを手掛ける大倉(大阪市)は中国語で街の情報を紹介できるスマホアプリ「日本通」を開発し、商店街などに利用を呼びかけ始めた。「地元関西だけでなく、中国人観光客を誘致したい関東や九州からも問い合わせがある」(国際事業部)

 きっかけは本業で出会う中国人経営者などから「観光ガイドに載っていない日本らしい町を訪れてみたい」と言われたことだったという。同事業を企画した清滝静男会長は「中国での実績を生かして、日本の地方を元気にする事業に育てたい」と話す。東南アジアからの観光客を対象にしたアプリの開発も検討している。

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