ところが米国以外の一部の国では、この機能が使えない。レーベル側との配信契約が進まず、配信できる楽曲を集められていないためだ。ウェブサイトや動画にも小さな文字で「音楽機能は、現在一部の国ではご利用いただけません」という表示が添えられている。その「一部の国」の代表格が日本だ。
「我々が価格決定権を持てないお店に安い価格で商品を出したくない。それが音楽業界の気持ちです」。音楽ライセンスの管理を担う日本音楽著作権協会(JASRAC)の担当者は業界の反応をこう説明する。
アップルは「iTunes Store」で音楽データを1曲あたり150円、200円といった統一的な価格を設定するなど、コンテンツを自社の「価格テーブル」に乗せて販売している。一方、日本の音楽業界ではCDやDVDなどディスクの販売比率が依然高く、携帯電話向けにより高い価格帯で「着うた」などを提供している。低価格なうえ、売り方の制約が多いアップル向けに供給するには、条件面で折り合いがつかないのだ。
音楽配信する際には、著作権を持つ側が配信を許諾し、一定の著作権料が支払われることが必要だ。従来のiTunesストアの仕組みでは、利用者がデータ配信を受けるのは1つの端末に対して1度のみだった。一方、「iTunes in the Cloud」では、アップルは複数の端末に対し配信することになる。この仕組みで配信を始めるには、配信方法を著作権者側が受け入れることが欠かせないが、それには金銭面や権利保護を含め諸条件に同意することが大前提になる。
アップルと日本の音楽業界との「すれ違い」は過去にもあった。
日本で「iTunes Store」(開始当時は「iTunes Music Store」)を始めた時も同様の問題に直面した。「配信価格などを巡り、レコード会社が受け入れに消極的だった」(業界関係者)こともあり、十分な楽曲数を集めるのに苦戦。2003年の米国向けサービス開始やその後の欧州展開に遅れて、ようやく05年に日本進出を果たした。







