大分県、農業用水利用の発電計画相次ぐ

2011/9/2付
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 大分県内で農業用水を利用した小水力発電の導入計画が進んでいる。同県が概略調査をした37カ所の候補地のうち、実現性が高く、地元が推進の意見でまとまった3カ所で今年度、導入に向けた本調査が実施される。農業経営が厳しい中、売電で農家の負担を少しでも軽減するのが狙い。成立した再生エネルギー特別措置法も追い風になる。

賦課金下げたい

 「売電でお金が入れば農家の賦課金を下げたい」。すでに本調査に入っている元治水(げんじすい)井路土地改良区(由布市)の佐藤高信理事長は話す。農業用水を使う稲作農家は、水路を維持管理する改良区に賦課金を支払っている。米価下落で稲作農家の経営は厳しく、改良区が売電収入を確保することで賦課金を下げ、農家の負担を軽減したいというわけだ。

 同改良区が想定している水力発電の最大出力は300~350キロワット。現在の賦課金は10アール当たり年3千~8千円程度だが、「計画がうまくいけば半額ぐらいにできるのではないか」(佐藤理事長)と試算している。

 9月から本調査が始まる玖珠町土地改良区(玖珠町)の長野道範事務長も「売電収入で水路の維持管理を賄い、農家の賦課金を下げられれば」と期待する。一方、明正井路土地改良区(豊後大野市)の阿孫栄理事長は「発電した電力を揚水機の稼働や、農家が獣害防止で設置している電気柵に使いたい」と語る。

県内に適地多い

 大分県は農林水産省が2009年度に補助制度を設けたのを機に農業用水発電の普及を積極化。中山間地が広がる県内には適地が多いとみている。

 お手本もある。県内5カ所の既存の農業用水発電のうち、2カ所を手掛ける富士緒井路土地改良区(豊後大野市)だ。同改良区が水力発電を始めたのは1914年(大正3年)。台地の上に灌漑(かんがい)用水を揚げる揚水機の電源として設置した。

 もう1カ所は84年に稼働。用水路の整備で膨らんでいた借入金返済のため、売電収入を目的に最大出力1500キロワットの発電設備を整備した。今では建設費の償却も終え、2カ所の発電で年約1億円の売電収入を確保。農家の賦課金は2千円という低水準を実現した。

 ただ、同改良区の後藤大二郎事務局長は「造ればもうかるわけではなく、採算が重要」と強調する。同改良区には適地があり、運営ノウハウの蓄積もあった。

 本調査でOKとなっても、農業用水を発電に利用するための河川法の許可取得手続きには時間がかかる。再生エネルギー特別措置法が追い風とはいえ、九州電力との売電交渉も欠かせない。

 高齢化が進み、後継者のいない農家も多いため、導入は時間との競争という面もある。早期に採算を見極め、実現にこぎ着けられるか。法的な手続きや九電との交渉は大分県が担うことになっており、小水力発電がどこまで普及するかは県の取り組みにかかっているといえそうだ。

(大分支局長 谷川健三)

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