中国「新幹線」空席8~9割 急速に鉄道離れ
収入減、今後の整備計画に影響も

2011/7/29付
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 中国の鉄道事業で採算悪化の懸念が強まっている。23日に起きた高速鉄道事故で利用者離れが進み、収入減の恐れがあるほか、金融機関が鉄道省向けの貸出金利の見直しに動き始めたもよう。高速鉄道の整備に多額の投資を続けてきた鉄道省は負債が膨らんでおり、今後の整備計画や新路線開業にも影響が出そうだ。

北京・上海高速鉄道で客離れが進む(29日、上海虹橋駅)

 29日午後の上海虹橋駅。6月末に開業したばかりの北京までを結ぶ最新型の高速鉄道「中国版新幹線」の乗客はまばらだった。北京まで途中2駅に停車する列車と、途中6駅に停車する列車の2便の30日から1週間の予約状況は空席率が8~9割にのぼり、開業直後の熱狂は薄れた。

 浙江省温州市で起きた高速鉄道の衝突・脱線事故から30日で1週間。死者数は29日に1人増え40人に、負傷者も200人近くにのぼる。利用者の間では「しばらくは飛行機を利用したい」と高速鉄道を敬遠する声もあり、証券会社の調べでは北京―上海間の航空便の搭乗率は9割と「高速鉄道開通前の水準」という。

 温家宝首相は安全重視を強調しており、今後、幅広い路線整備計画に影響が出る可能性がある。8月12日に開幕する学生のスポーツ大会、ユニバーシアード夏季大会に合わせて開業準備を進めてきた広東省の広州、深セン両市を結ぶ新路線は29日時点で開業日が未定。地元紙には「大会に間に合うことより安全が第一だ」という声も載った。

 中国政府は南北4本、東西4本の「4縦4横」と呼ぶ高速鉄道網の整備を計画。広州―深セン間の開業もその一環で、北京市と香港を結ぶ南北の長大な路線の一部だ。この路線で開業済みなのは湖北省武漢市と広州の間だけ。他の路線も6月末に開業した北京―上海線を除き未開通部分が多い。

 高速鉄道の開業の遅れや利用者減少は多額の資金を投じて高速鉄道網を整備してきた鉄道省の収益力を弱めかねない。鉄道省は金融機関からの借り入れや債券発行で資金を調達してきた結果、今年3月末の負債総額は約2兆元(約24兆円)にのぼる。総資産に占める負債率は58%で、2008年末から11ポイントの上昇だ。

 鉄道省解体論も浮上するなか、中国紙「21世紀経済報道」は、ある国有銀行大手が事故発生後の26日に高速鉄道関連の融資先に対する与信管理徹底を緊急通知したと伝えた。鉄道省向けの優遇金利を見直す動きも出ているという。鉄道省にとっては金利負担が増し、収益力低下が懸念される。

 信頼回復にはほど遠い。鉄道省は28日、事故原因を「信号設備の設計上の欠陥と、運行指令担当者の安全意識の欠如」と説明したが、衝突された列車がなぜ停止したのかなど、不明な点が多い。

 責任問題も不透明だ。劉志軍・前鉄道相は2月に汚職疑惑で失脚した。今後も混乱が続けば、鉄道省の資金調達計画が狂うのは確実で、鉄道整備にも影響を与えそうだ。

(上海=菅原透、広州=桑原健)

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