混迷深まるエジプト ムバラク元大統領保釈を準備

2013/8/22付
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 【カイロ=久門武史】エジプト司法当局は22日、裁判所が21日に命じたムバラク元大統領の保釈の最終的な準備に入った。22日中にも出所する見通し。元大統領は2年前の反政府デモで退いたばかりだけに、暫定政権への抵抗を続けるイスラム勢力だけでなく、政権支持層にも疑問の声が上がる。今後抗議行動が広がる可能性があり、エジプト情勢を一段と複雑にするのは確実だ。

 検察当局は22日、元大統領を勾留しているカイロの刑務所に対し、保釈を認めた。ロイター通信などが伝えた。暫定政権は保釈されれば非常事態宣言に基づく軟禁下に置くとの声明を発表。軍病院などに移送されるとの観測が出ている。公職復帰の見込みはないが、刑務所を出ることへの反発は強く、公の場に現れるのを避けようとしている可能性がある。

 モルシ前大統領の出身母体であるイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」などは21日、集団礼拝日の23日に「殉教の金曜日」と銘打って大規模デモを決行すると表明した。1週間前の16日に「怒りの金曜日」と名付けて各地で開いた大規模集会では治安部隊との衝突で100人規模の死者が出ており、再び流血の事態になる恐れがある。

 一方、暫定政権の支持勢力でも、2011年の民主化運動「アラブの春」でムバラク政権打倒に動いた若年層や、政治経済の自由を重んじるリベラル派などから保釈への反発が強まりそうだ。独裁政権時代を嫌悪する層が離反し、一部が同胞団と連携する可能性もある。

 11年の反ムバラク体制デモの中核だった若者組織「4月6日運動」の幹部ターリク・ホーリ氏は日本経済新聞の取材に「保釈は容認できない」と批判。「同胞団と共闘することも組織内では議論されている」と話す。政教分離を重視し、同胞団と敵対する若者組織「タマルド(反乱)」は22日、保釈を批判する声明を出した。

 空軍出身の元大統領は1981年から30年間にわたる独裁体制を敷いた。退陣につながる反政府デモ参加者を当局が殺害するのを止めなかったことや、汚職など複数の罪で起訴された。殺害関与を巡ってはやり直し裁判が続いているが、今回の保釈命令で一連のすべての事件で保釈を得た。暫定政権は軍が主導するため、裁判所の保釈決定にはその意向が影響したとする見方が強い。

 暫定政権は同胞団の弾圧を軸に、反対勢力を封じる強権的な姿勢を強めている。宗教組織に基づく政党の設立禁止などを盛り込んだ憲法改正草案が浮上したほか、副大統領を辞任したエルバラダイ国際原子力機関(IAEA)前事務局長の訴追手続きに着手した。

 若年層や世俗派・リベラル派などは「イスラム同胞団統治の混乱よりまし」として暫定政権に一定の支持を与えていた。元大統領の保釈をきっかけに、暫定政権の政策を疑問視する声が増える可能性がある。

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