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 未来面は、日本の将来像を読者、企業、記者の3者が一体となって考えていく新しい紙面です。今年度の通年テーマは「○○○○○日本を始めよう。」。未曽有の大災害を乗り越え、この国をどのように作り変えていくのかを考えていきます。
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技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長 第24回(7月23日)
「オープン」が価値を生む

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2012/7/23 3:30
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 東レ、花王、ブリヂストン。味の素がこの半年の間に提携し、記者会見でがっちりと握手をした会社です。繊維、家庭用品、タイヤ。3社ともその業界のトップ、誰もがご存じの企業ばかりです。「どうして食品メーカーの味の素が、分野の全く異なる企業と組むのか」と疑問に思われる方が多いかもしれません。確かに一見しただけでは、その結びつきは分かりにくいと思います。

味の素 伊藤雅俊社長
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味の素 伊藤雅俊社長

 では、謎解きをしてみましょう。東レと取り組むのは植物原料からナイロンを作る共同研究、花王とは健康診断による生活習慣病予防などの共同事業、ブリヂストンとは植物由来の合成ゴムの共同開発です。いずれも味の素が1909(明治42)年の創業以来、研究を続けてきたアミノ酸や発酵などの先端バイオ技術が役に立つと考えられるのです。

 ナイロンやゴムは石油から作られますが、これら化石燃料は植物など太古の生物に由来するとされています。細胞が同じアミノ酸で構成されている現代の植物から、ナイロンやゴムが作られても不思議ではありません。また、健康診断に欠かせない血液検査では、アミノ酸の解析によって受診者の体質を判断できるので、適切な食事のメニュー提案などにつながります。東レ、花王、ブリヂストンのそれぞれの優れた研究技術、科学的知見と、味の素の技術とを組み合わせることで、グローバルに広がる新たな道が開けるはずです。

 企業が社外のアイデア、技術を取り入れて研究開発を加速させることを「オープンイノベーション」と呼びます。味の素は今、オープンイノベーションに大きく舵(かじ)を切りました。企業とだけでなく医療機関、海外の政府機関とも連携して、がんの早期発見や乳児の栄養改善のプロジェクトなどに参加しています。自分たちだけでは実現不可能なことについて様々な企業や研究機関と積極的にリンクし、新しい価値の創造に取り組んでいます。

 技術開発の競争が激しくなる中で、独自の技術を外部にさらすことに疑問を持たれる方もいるでしょう。社内にも技術流出を懸念する指摘がありました。しかし、そもそも企業の研究機関が目指すべきなのは、ベースとしている技術の産業化です。研究のための研究ではなく、消費者やユーザーのニーズをくみ取り、それに資することが重要なのです。従来型の研究体制では、多様化し、グローバル化する社会の変化についていけなくなっていた面もあります。企業の成長ドライバーであるR&D(研究・開発)の現場にいる研究者に今、求められているのは、改めて開拓者精神を持ち、未来の、地球サイズの仕事に貢献する姿勢です。

味の素社長の伊藤雅俊さんの提言に対するコメントを募集します。コメントはこちらから

 その研究開発の可能性を広げるのがオープンイノベーションなのです。要素技術は世の中に無数にあり、その数だけ専門家がいます。自分1人ではできない研究も、外部の技術を融合することにより、全く新しい研究成果や、その先にある製品開発といった明確な「出口」が見つかるようになります。研究活動のスピードが上がるだけでなく、仕事の仕方を他社から教わるといった利点もあります。現在の連携事業の多くはまだ研究室レベルではありますが、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)していくなかで出口に近づいていくはずです。もちろん、経営側のしっかりしたコミットメント(責任を持って関わること)も重要です。会社が重要だと判断したテーマを決め、研究の推移を見守り、支援していく姿勢が欠かせません。

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この記事へのコメント
  • 現実夢さん (2012/7/27)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     小生が勤務する会社でもオープンイノベーションと称して大学や他企業と交流していますが、結局自社開発に拘り気味です。また少し開発が進まないと社内の逆風(自社には厳しい意見)に耐えられず潰れていくテーマが多く、結局他社に先んじられます。これが完全他社技術の導入だと簡単に要求に妥協が出て製品化にうまくいくことがおおいです。味の素のマネージャはそういうバランス感覚の取れた人が多いのかなと思いました。

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  • recaldentさん (2012/7/26)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     伊藤さんのご意見はもっともだと思います。また賛成します。近年海外企業への知財流出が懸念され、知財保護の重要性が大きく唱えられるようになりましたが、これは海外進出に伴いある程度は仕方のない事です。逆に海外の知財を日本側がもっと取り入れるようにすることもできるはずです。それには海外企業の日本への直接投資をもっともっとさかんにする必要があります。それには日本の特に製造業が感じている所謂6重苦を積極的に解消しなければなりません。為替と環境以外は殆ど人為的なものでありこれらはやる気になればすぐにでも解決できるものだと思います。

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  • おきひかさん (2012/7/25)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     オープン・イノベーションは、自前主義が蔓延した多くの企業にとっては、これまでと異なったR&Dの進め方です。なので、現場の研究者にとっても、ただ、「オープン・イノベーションをもっとやるべき」と言われても戸惑いがちです。「本当にそう思っている?」と懐疑的な人も少なくないです。そこで、伊藤社長のように、明確に、なぜやるべきと考えているのかを説明し、トップがコミットしている姿を見せることが非常に重要だと思います。ここまでトップに明確な姿勢を見せらせると、現場も迷いなく取り組むことができるので、素晴らしいと思いました。

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  • とよひょんさん (2012/7/23)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     異業種でコラボしてR&Dをすることは自社で試みるよりも、資金、人材、技術を融合でき面白い試みだと思う。M&Aと比べても相乗効果は上がると思う。もう一歩進めて本社からスピンオフして、ストックオプションなどのインセンティブのある報酬体系を整備することで大企業では味わえないモチベーションをあげることを検討されると良いのではないかと思う。IPOを実現すると親会社にも莫大な利益をもたらすだろうし、証券市場、国益にも合致するし社員にも夢を与えられると思う。新しいことに挑戦する夢と利益、両方がそろうことが必要と思う。

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  • てんぺんさん (2012/7/23)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     今、世の中に求められているものが明快に解説されていて、頭の中がすっきりした。グローバル(ヒト・モノ・カネをボーダレスに動かし、グローバルな観点に立って思考し、行動する)。オープンイノベーション(多様性の爆発とスピードの加速)。伊藤雅俊社長のコメントには、いつも感銘を受け、勉強になる。

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  • ご隠居さんさん (2012/7/23)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     或る企業が「オープンイノベーション」を企図的に推進しようとする時踏まえなければならない2つのポイントについて述べる。その1つは、その企業が長年にわたって練磨・蓄積してきたコア技術をベースとし、その根っこから発する他との新結合がイノベーションを生む確率が高いということ。味の素の場合のそれは「先端バイオ技術」ということであろう。2つ目は、伊藤氏の言われる「想像力」をいかに生み出すか、有名な「ホンダのワイガヤ」的自由討議・談論風発からアイデアを生み収れんさせていくか、それともNHKのプロジェクトX的なリーダーの才覚に委ねていくか、ここのところのマネジメントが重要ポイントとなる。

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  • Hightechreさん (2012/7/23)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     アメリカ流の選択と集中理論が、日本の企業には当てはまらない実例がここにもあった。

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  • まどさん (2012/7/23)
    「技術交流の盛んな日本を始めよう 味の素・伊藤雅俊社長」への投稿

     オープンイノベーションは、鈴木三郎助社長から持たれ続けてきた開拓者精神から派生していると思いました。これは、現代の拓かれた社会の中で必要なものだと思います。テーマを決め、企業内外での交流を促し、多様な文化に対応することができれば、日本企業がもつ組織文化が陥りやすい”村社会の心理”を回避することができると考えます。
    実際にこのオープンイノベーションを実現できる企業がこれからもトップを走り続けるのだと感動しました。

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