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米携帯電話業界が直面する課題 FCC年次リポート
ITジャーナリスト 小池 良次

2010/6/1 14:00
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FCCの年次リポートのニュースリリース

FCCの年次リポートのニュースリリース

 米連邦通信委員会(FCC)は5月20日、米国携帯電話業界の競争環境に関する年次リポート「Annual Report and Analysis of Competitive Market Conditions With Respect to Mobile Wireless, Including Commercial Mobile Services」を発表した。その内容は「音声通話の減少」や「データサービスへの移行」「大手による寡占の進展」など米国携帯業界が抱える課題を網羅している。

初めて音声通話量が減少

 237ページに及ぶ同リポートは、2008年から09年にかけての米国携帯電話市場を様々な視点から分析している。米国は携帯電話の普及率が人口比の9割を超え、一人当たりの音声通話は月間709分に達する。米国市民の99.6%(2億8400万人)は最低1社の携帯電話会社を、89.6%(2億5500万人)は2社以上を利用できる状況になっている。

 市場動向に目を移すと、興味深い数字が並んでいる。まず09年は、初めて音声利用が減った年となった。音声通話が携帯電話サービスの大部分を占めていることに変わりはないが、順調に伸びてきた音声通話量が減少に転じたことは大きな意味を持つ。

 この理由をFCCは、「利用者の携帯テキストメールやマルチメディアメッセージへの依存度が高まっているため」と分析している。つまり、携帯電話で話す代わりに、携帯メールで済ませるユーザーが増えているということだ。

 リポートは、「携帯電話市場の中心が音声利用からデータ利用へと移り始めた」と指摘している。スマートフォンの台数増加に伴って、携帯電話網を流れるデータトラフィックは急増している。ユーザー1人当たりの月間利用料(ARPU)はほぼ横ばいだが、音声などの伝統的なサービスからゲームやメッセージなどのデータ通信を使う新サービスへと「売上内容が変化している」という。

プラットフォーム競争が加速

 「端末とアプリケーションの急速な増加」も、米携帯電話業界における大きな傾向だ。米大手通信4社は08~09年に新型端末67機種を投入した。プラットフォームも、米アップルのスマートフォン「iPhone」やカナダのリサーチ・イン・モーションの「BlackBerry」、グーグルの基本OS「Android(アンドロイド)」、米ヒューレット・パッカードに買収されたパームのパームOS、米マイクロソフトの「WindowsMobile(ウィンドウズ・モバイル)」を搭載した端末といったように多様化が進んでいる。

 アプリケーションは09年末時点でiPhone向けが10万本以上、Android向けが1万5000本以上提供されている。携帯電話業界ではアプリケーション開発のブームが続いている。

 その一方で、「携帯電話事業者の寡占化」は進んだ。全加入者数と売り上げの6割をAT&Tおよびベライゾン・ワイヤレスの上位2社が握っている。両社に新規加入者が集まる一方で、第3位のスプリント・ネクステルと4位のT-モバイルUSAは、加入者の減少が08年で170万に達したと同リポートは指摘している。設備投資面では、不況にもかかわらず携帯電話業界は年間200億ドルを超える投資を続けている。ただし、その総額は減少傾向にあると述べている。

下位機種にもスマートフォン機能

 端末の多様化とアプリケーションの増加傾向はますます加速している。特にOSにAndroidを搭載した端末が増加しており、月間販売台数でiPhoneを追い抜こうとしている。事業者ではAT&Tがスマートフォン機能を中位から下位機種でも楽しめるようにする戦略を進めている。具体的には「Quick Messaging Device」機能を搭載した機種で、グループメッセージング、ビデオや写真の共有、アドレス帳などのサービスを実装する。こうした動きは端末の多様化に拍車をかけていくだろう。

上位2社が直面するポストペイド型の限界

 事業者別ではトップ2社が新規加入者を集め続けているものの、今年に入って状況が変わり始めたとリポートは述べている。例えば未払いが少なくARPUが高いポストペイド(後払い)で、加入者の頭打ち現象が見え出した。

 ベライゾンの10年第1四半期決算によれば、ポストペイドの新規加入者は前年同期比で67%減少した。AT&Tでも同じ第1四半期のポストペイドが43%減少している。一方、スプリントとT-モバイルのユーザー数は09年に82万7000件増加している。

 下位事業者の優良顧客を吸収しながら成長してきた上位2社に息切れが見えており、ポストペイドに依存してきた米携帯業界の成長パターンが変化してきた。

携帯電話以外の端末に触手伸ばす

 携帯電話大手は成長を維持するため、新分野への展開に力を入れている。AT&Tはアップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」や米アマゾンの電子書籍端末「Kindle(キンドル)」といった携帯電話以外の端末を強化している。スプリントはプリペイド(前払い)端末への依存を高めている。ベライゾンはネットブックなど非携帯端末への展開を強める一方で、プリペイドの強化にも乗り出した。

 もちろん、ポストペイドユーザーが上位2社に集まる傾向が弱まったとはいえ、両社の寡占状態に変わりはない。特に、今年秋あたりからサービスが広がり出す次世代データ通信「LTE」では、スプリントやT-モバイルの苦戦が予想されており、再び寡占状態が加速する可能性すら指摘されている。

ベライゾンが700MHz帯をサブライセンス

 同リポートでは、大手事業者によるLTEなどの次世代サービスに大きな期待を示しながら、周波数確保の重要性についても指摘している。そうしたなか、今年からLTEサービスを展開するベライゾンは700MHz無線免許をサブライセンスして全米への展開を早めようとしている。

 従来の第3世代携帯電話(3G)では、大手事業者は地方の携帯電話会社とローミング契約をすることで、エリア拡大を進めてきた。しかし、地域系の携帯電話事業者は、周波数の確保や機器の調達、新技術への対応などに課題を抱え、LTEサービスの展開に苦しんでいる。そこでベライゾンは無線免許のサブライセンスとローミング契約を組み合わせて地域系携帯電話事業者と交渉を進めている。

 大手が免許をサブライセンスしてまでネットワークの整備を進めるという例は過去にない。もちろんベライゾンには、早く整備地域を広げLTE競争で優位に立ちたいという意図がある。さらにその背景には「音声からデータへの脱皮を急がなければ、携帯ビジネスに将来はない」という切迫感があるといえるだろう。

小池良次(Koike Ryoji)
 米国のインターネット、通信業界を専門とするジャーナリストおよびリサーチャー。88年に渡米、93年からフリーランスジャーナリストとして活動している。サンフランシスコ郊外在住。主な著書に「クラウド」(インプレスr&d)など。

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