エコロミスト群像

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

電力の80%を再生可能エネルギーに ドイツの挑戦、研究現場を訪ねる
編集委員 滝順一

(3/3ページ)
2010/12/1 7:00
共有
保存
印刷
その他

■風力発電、洋上ならではの難しさ

 ドイツではすでに、再生可能エネルギーが電力の16%(09年)を賄っている。その4割は風力発電が供給し、ドイツの再生可能エネルギーの屋台骨を支える。一段の増強を目指し、北海やバルト海の洋上に大規模な風力発電所の建設を計画している。欧州最大級の研究機関、フラウンホーファー研究機構は北海に面する港町、ブレーマーハーフェンに風力エネルギーシステム研究所を新設した。同所のゲレット・ヴォルケン・メールマン博士に洋上風力の課題などを聞いた。

フラウンホーファー研究機構のヴォルケン・メールマン博士=(C)Volker Lannert

フラウンホーファー研究機構のヴォルケン・メールマン博士=(C)Volker Lannert

 「洋上は地上に比べて、風力発電の環境条件が厳しい。風向や風力など風の条件は、陸上と同様に発電所の立地を決めるうえで最も大事な自然条件だが、洋上の場合、加えて海底地形や海流、波の条件がある。バルト海に建設するなら海氷も考慮に入れなくてはならない」

 「洋上だと、建設地点を選ぶために風の状況(風況)を知るだけでも大きなコストがかかる。研究所では超音波やレーザー光によって空気の動きを精密に測定できる装置を開発した。海底に設置して波の大きさや海流の速さなどを測る装置もつくった。こうした装置を備えた観測塔を北海に建てて建設場所の選択に役立てている」

風力発電所建設のため北海で気象や海況を調べる観測塔(フラウンホーファー研究機構提供)
画像の拡大

風力発電所建設のため北海で気象や海況を調べる観測塔(フラウンホーファー研究機構提供)

 「海底地形も建設には重要な要素だ。北海などには大昔に氷河で削られてできた谷が海底にある。人工地震による探査で地下構造を把握してから工事にかからないと地盤が弱い場所に建設することになりかねない」

 「ドイツで最初の洋上風力発電所は北海の沖合約45キロにあり12機の風車からなる。沖合であるほど風は強く、大きなエネルギーが得られる。その半面、環境条件は厳しくなるが、洋上を開発していかなければ、風力を主体に再生可能エネルギーを拡大する政府の計画は実現が困難だろう」

〈取材を終えて〉 メルケル首相によるエネルギー政策の発表は、原子力発電所の稼働延長と抱き合わせだった。21年に原発を止めるとしてきた方針を変更し12年程度の延長を認めるとの内容。ドイツ国内でも日本でも原発政策の変更が大きく報じられ、再生可能エネルギーの拡大策はその陰に隠れた。

 しかし、2つの政策は同根である。ドイツは50年に温暖化ガス排出を80%削減(1990年比)する目標を掲げており、実現には再生可能エネルギーの拡大と原子力利用が不可欠だ。論争を呼ぶことを承知で2つの政策を掲げた点に、ドイツ政府が温暖化対策に立ち向かう決意がうかがえる。決意の背後には、石油や天然ガスの海外依存度を減らしておきたいとの安全保障への配慮もうかがえる。

 5月には環境省の諮問会議の科学者グループが「50年には再生可能エネルギーで電力の100%を賄える」とした大胆な報告書を発表した。報告は原発の稼働延長も石炭火力の新設も不要だとする非常にグリーンな内容だった。メルケル首相は科学者の報告を土台にしながらも、原発稼働を望む電力業界に配慮して政策的な落としどころを探ったと受け取れる。再生可能エネルギーと送配電網への投資は今後、巨額になるとみられ、電力料金の値上げという形で国民が負担することになる可能性が大きい。

エコロミスト群像をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 次へ
共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

企業・業界をもっと詳しく

企業がわかる。業界がみえる。ニュースとデータをまとめてチェック!

関連記事

日経産業新聞のお申し込みはこちら

【PR】

エコロミスト群像 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

ファーストリテイリングの新田幸弘・グループ執行役員

有害化学物質の全廃、透明性を重視
ファストリの新田グループ執行役員に聞く

 衣料品ブランドの「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは製造プロセスにおける有害化学物質の使用・排出を2020年までに全廃する方針を発表した。国際的に環境保護活動を手掛ける非政府組織(NGO…続き (2013/3/20)

堂脇直城ジャパンブルーエナジー社長

木くずから水素 新技術、燃料電池車に活用
ジャパンブルーエナジーの堂脇社長に聞く

 木くずや下水汚泥などから水素をつくり出す新技術が注目されている。ドイツからの技術導入をもとに実用化技術を磨いてきたベンチャー企業、ジャパンブルーエナジー(東京・千代田)を中核に、岩手県宮古市で水素を…続き (2013/3/6)

菅谷昭・松本市長

チェルノブイリ事故25年以上、現地なお先見えず
松本市の菅谷市長に聞く

 長野県松本市の菅谷(すげのや)昭市長は、外科医として1996年から2001年まで約5年半、ベラルーシに長期滞在し、チェルノブイリ原子力発電所事故(86年)後に多発した小児甲状腺がんの治療にあたるなど…続き (2013/2/20)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

07月28日(金)

  • 破壊的な深層学習強化を進めるPreferred Networks ~変革の波をまとめてさらに大きな波を作り出す
  • オープンな自動運転車開発とな。配車サービス「Lyft」がUberの後を追って参入
  • AR時代の始まりを感じます。写真を宙に表示させるアプリ「floatO」

日経産業新聞 ピックアップ2017年7月28日付

2017年7月28日付

・OKI、光ファイバーセンサー発売へ
・タンクの液体、波打ち抑制 中大、地震や運搬向けの装置
・冷凍能力抑え、3割小型化 前川製作所の自然冷媒冷凍機
・ツガミ、自動旋盤の切削力4割向上
・マツダ、米販売店テコ入れ 半数の300店超を対象に…続き

[PR]

関連媒体サイト