シニア起業家「異種格闘」 再創業に注ぐ成功の教訓

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2012/11/24 8:38
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 かつて創業した企業を業界大手にまで育て、一線を退いた実業家がシニアになって再び起業魂を燃やしている。背景にあるのは前職で達成できなかった思い、時代の変化への高揚感などさまざま。ただ「第二の創業」には、果たせなかったことへのこだわりや社会貢献意識といった、実は事業に必要な基本要素が見てとれる。4人の挑戦から、事業のヒントを読み解く。

ゲーム会社→介護老人施設

原動力は社会貢献

 千葉市の郊外に立つ分譲マンション、スマートコミュニティ稲毛。「アクティブシニアタウン」を掲げ、50歳以上で介護を必要としないことが入居条件という異色の施設だ。日本料理店が監修した懐石料理を出し、ダンスホールやテニスコートなど娯楽施設も充実。約1500万円からの初期投資は要るが、毎月の食費・サービス料は8万9千円に抑えた。

 10年に開業し、入居者数は約200人。最大1千人のコミュニティーを目指す。「共同購入でコストを下げ年金の半分で暮らせるようにする。老後リスクを減らせば金融資産が消費にも回る」と、運営するスマートコミュニティ(千葉市)の宮本雅史会長(55)は力を込める。

 宮本会長はゲーム大手、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の創業者で、人気ゲーム「ファイナルファンタジー」を世に送った。30代半ばで経営から身をひき投資家に転身。「最後は社会に役立つ事業に」と思い定めたのがシニアタウンだった。

 住民たちは陶芸やゴルフなど約20のサークルを立ち上げ日々を楽しむ。「1社だけでは高齢人口をカバーできない。成功事例となって参入を促し、10年後には当たり前のビジネスにしたい」(宮本会長)と意気込む。

 名をなした経営者たちが「第二の創業」に挑戦している。前に育て上げた企業の株式公開で得た潤沢な資金や厚い人脈など、通常の起業に比べて優位はある。しかし、それだけではない。底流にはもうけに突き進むのではなく、社会への貢献を意識する姿勢が垣間見える。

 さらにいくつかの事例を探ってみると、事業や起業に必要な3つの要素を示唆している。例えば「執念」の重要性を教えるのはメタモジ(東京・港)の浮川和宣社長(63)だ。ジャストシステム時代にやり残した研究にこだわるうちにタブレット時代が到来、すべての経営資源を投入してアプリ開発の成功につなげた。

「赤毛和牛」の生産を手がける神内ファーム21の神内良一社長
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「赤毛和牛」の生産を手がける神内ファーム21の神内良一社長

 「理念」も欠かせない。神内ファーム21(北海道浦臼町)の神内良一社長(86)は黒毛に比べ珍しい「赤毛和牛」の生産を手がける。理由は「おいしいから」。この単純な説明の裏には北海道の農業の生産性を高め、日本の農業の競争力を高めるという理想が秘められている。従来は栽培や飼育していない種類に照準を絞って農畜産に取り組むのはそのためだ。

 「発想の転換」で再度、挑戦するのが俺のフレンチ・俺のイタリアン(東京・中央)の坂本孝社長(72)。高級食材を安価で提供するために客の回転率を高める事業モデルはブックオフコーポレーションを設立したときの発想に通じる。中古書籍の評価という難しい作業を単純化し、商品回転率を高めて収益を確保する発想は当時も目をひいた。

 日本の起業環境は厳しい。リスクマネーは乏しく、企業支援の制度も貧弱といえる。そんな中で、変化の兆しがある。シニアの台頭だ。日本政策金融公庫によると、起業数に60代以上が占める比率は、11年までの3年間は6.5~7.7%と過去20年で最高水準にある。

 起業大国の米国でも、けん引役はシニアだという。大和総研によると11年に起業したベンチャー幹部の34%を55~64歳が占める。「日本でも大企業の苦境もあって技術や人脈を持つシニアが独立し、有望な起業家の母数が増えている」(奥谷貴彦研究員)

 「第二の創業」の気概とノウハウがシニア層をはじめ、下の年代にも伝承されれば、日本の産業の活性化につながるかもしれない。

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