米の放送業界、視聴者不在の高精細化とマルチスクリーン化
デジタルメディアコンサルタント 江口 靖二

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2012/4/22付
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 米ラスベガスで、4月19日まで開催された世界最大の放送機器展「NAB Show 2012」。今年は「Where Content Comes to Life」というテーマを掲げコンテンツ重視の姿勢を打ち出したが、現実は放送業界内に向けた機器展の枠を出てはいなかった。会場には「4K」(高精細化)と「4S」(マルチスクリーン化)といった放送業界の次を切り開くシステムの提案が相次いだが、視聴者の視点が不足するなど普及に至る課題も浮き彫りにしていた。

■映像制作に参入したキヤノンが積極策

今年から映像制作市場に本格参入したキヤノンがNAB Showに出展した
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今年から映像制作市場に本格参入したキヤノンがNAB Showに出展した

 4Kとは次世代の映像規格のことで、フルHD(1920×1080ピクセル)の4倍に当たる3840×2160ピクセルの画像解像度を持つ。同じ画面サイズなら4倍高精細になるという意味で、必ずしもディスプレーの物理的なサイズが4倍になるとは限らない。

 4K映像を視聴できるようにするには、まずカメラが4Kに対応している必要がある。これまでテレビ局など業務用の4K対応カメラは米国レッドだけが販売していたが、今年はパナソニック、ソニー、JVCケンウッド、ikegami、そしてキヤノンなど日本勢が軒並み4K製品を展示してきた。プロ用ビデオカメラでは日本メーカーが市場のほとんどを占めている。フルHDで押さえた市場を維持しながら、次世代の4Kへの道を付けて得意先の放送局に売り込む構えだ。

 パナソニックは4Kカメラのコンセプトモデルを、ソニーは4Kにも対応できるカメラ「NEX-FS700JK」を発表した。ソニーの製品の価格は11倍レンズを含めて84万円。従来の同等クラスのフルHDカメラと比べて、価格が2割アップした程度で4K化を実現している。

 業務用カメラを販売する日本勢でもっとも目立っていたのは今年から映像制作市場に本格参入したキヤノンの攻勢だ。発表済みの業務用カメラ「EOS-C300」に加え、デジタル一眼レフカメラに4K動画撮影にも対応させた「EOS-1D C」を正式に発表。さらに、実売価格が3万ドル前後の最上位機種「EOS-C500」を発表した。

 もともとキヤノンは多種類のレンズを提供していたが、今年のNABでは初めて業務用の動画撮影機能付きカメラを「CINEMA EOS SYSYTEM」としてラインアップした。これらの機種はキヤノンのデジタル一眼レフ用EFレンズ群がそのまま使えるほか、新たに追加された「EF CINEMA」と呼ぶレンズ群も使える。さらに同社はテレビディスプレーも自社ブランドを開発し、30インチの4Kディスプレーのプロトタイプを会場内に展示。過去最大級のブースを構え、映像制作でのシェア確保に並々ならぬ意欲を示した。

■家庭に届けるすべがない4K動画

 しかし4Kカメラ市場が立ち上がるのは、まだこれから。各社がターゲットにしているのは2~3年後だ。4Kの動画ファイルの容量が巨大サイズになるため、劇場用のデジタルシネマはともかく、放送、ディスク、ネットといったコンテンツ伝送と流通で問題が山積している。

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