筋肉を作る「スポーツ遺伝子」、トレーニングに生かす
遺伝子ビジネス最前線(上)

(2/3ページ)
2011/10/23付
保存
印刷
その他

 スポーツで注目されている「ACTN3」遺伝子は筋肉構造の特徴を決めると言われている。研究は2003年にさかのぼる。「ACTN3」は、速筋の働きが安定する「R」と、持久的な体の働きが強くなる「X」の2種類の遺伝子で構成される。父母からそれぞれの遺伝子を受け継ぐため、その組み合わせは大きく「RR」(パワー・スプリント系)、「XX」(持久力系)、「RX」(パワー・スプリント/持久力系)という3つのタイプに分類できる。

スプリント競技の選手には瞬発力に優れるRRタイプが多いというが…(8月、韓国・大邱で開催された陸上世界選手権)=共同
画像の拡大

スプリント競技の選手には瞬発力に優れるRRタイプが多いというが…(8月、韓国・大邱で開催された陸上世界選手権)=共同

 シドニー大学などは2000年代前半、オーストラリアで50人のオリンピック選手を含む300人以上のトップアスリートを対象に「ACTN3」を調査。スピードスケートや短距離水泳種目の選手に「XXタイプ」が一人もいないことを解明した。さらにスポーツ競技を瞬発力が求められる競技と持久力が重要になる競技に分類して調べたところ、高い持久力を求められる競技の順に、「XXタイプ」の割合が高くなることが分かった。

 黄主任は日体大で学ぶ競泳や水球、レスリングのトップ選手を対象に遺伝子検査を実施。背筋力や立ち幅跳びなどといった瞬発力が求められる測定項目で「RRタイプ」の選手が多いことを検証し、この3月の学会で発表した。

 サンプル数でいえば、オリンピック選手はまだ一握りに過ぎず、統計学的には少ないとの指摘もあるが、「RR遺伝子を持つ選手が特定の競技に強いという関係は明らかになりつつある。将来は人材発掘やトレーニング方法に遺伝子結果を生かすことができるのではないか」(黄氏)と期待を寄せる。

■「各選手の持つ遺伝子に注目」

 「選手の『個性』に着目して、トレーニングの方法を変えている」と話すのは、福島大陸上部の川本和久監督。2008年に開催された北京五輪の女子400メートルリレーでバトンをつないだ4選手がすべて教え子だったという、日本の陸上女子短距離指導の第一人者だ。

 北京五輪の女子400メートルリレーは、日本記録に近いタイムを出しながら、予選で敗退。「教え子を五輪に」という夢は達成したものの、「世界のトップは遠い」と痛感したという。オーストラリアでの遺伝子研究の成果を知り、選手が生まれながら持つ適性を踏まえたトレーニングを取り入れることにした。バイオベンチャーのG&Gサイエンス(福島市)と共同でアスリートが持つ遺伝子の特徴などの研究を進めている。

 例えば400メートルリレーの日本記録保持者の一員である渡辺真弓選手。検査結果から「RRタイプ」(パワー・スプリント系)を持つことが分かった。これを受けて、渡辺選手のトレーニングには、生まれつき瞬発力が強いといわれる遺伝子を最大限に生かすため、70メートルなどの短距離走を集中的に組み込むようにした。400メートル走の記録保持者である千葉麻美選手の遺伝子は「XXタイプ」(持久系)と判明。これまでスピード系と持久力系のトレーニングを同じ程度こなしていたが、弱みを補うためにスピード系を強化するトレーニングを増やし、記録を高めたという。

 川本監督は「それまでの短距離指導は、遅い選手は速い選手のフォームなどをまねることが基本だった」と振り返る。「長距離を走らせてばててしまう選手を、『根性がないやつだ』と思い込んでいたが、遺伝子が原因だったことに気が付いた」という。さらに6人の卒業生と福島大学陸上部に所属する60人に遺伝子検査を実施。個人が持つ遺伝子に合わせたトレーニングを取り入れる予定だ。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 次へ
保存
印刷
その他

電子版トップ

関連キーワードで検索

スポーツ情報技術選手遺伝子情報スポーツ遺伝子

【PR】

【PR】

主要ジャンル速報

北海道 7:01
7:00
東北 7:01
7:00
関東 7:01
7:01
東京 7:00
7:00
信越 7:01
7:00
東海 16:00
15:00
北陸 15:03
14:59
関西 6:00
6:00
中国 6:02
6:01
四国 6:02
6:01
九州
沖縄
2:00
1:50

【PR】



日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報