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日米外交60年の瞬間 第5部

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記者が見た「バターより大砲」の世界 講和発効まで(5)
日米外交60年の瞬間 特別編集委員・伊奈久喜

2013/2/23 7:00
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 日本が講和条約、日米安全保障条約を結び、独立を得た1950年代初めの世界と日本の安全保障環境は、どうだったのだろう。1951年9月11日付の日経「経済教室」がそれを扱っている。「武山」の署名がある。

 経済の視点から世界の安全保障を分析したユニークな記事である。

 「『バターか大砲か』という言葉があるが、世はまさに大砲が優先する軍拡時代」と、日経の武山泰雄記者は冒頭で断じた。

■歳出の6割を軍事費にした米国

 バターとは社会保障など国民生活、大砲は軍事であり、予算をこれらふたつの分野にどう配分するかは、いつの世も、どこの国でも大きな問題である。

 ちなみに日本の2013年度当初予算をみると、社会保障費が防衛費のほぼ6倍である。防衛費は予算全体の5%、国内総生産(GDP)の1%に満たない。これをみる限り、現在の日本は「大砲よりバター」である。

 51年当時の世界はどうだったか。「平時の軍事費は国によって違いはあるが、大体国民所得の4~5%程度というのが標準のようだ」と武山は書く。当時は国の経済規模を示すのにGDPではなく「国民所得」が使われていた。

 これは平時の数字である。それでも現代に比べ、多い。ストックホルム国際平和研究所によると、2011年の世界全体ではGDPの2.5%である。4~5%は多い。

 当時の数字をやや詳しくみる。朝鮮戦争が始まる前の1950年の軍事費と国民所得の割合はユーゴスラビア(当時)の11.5%を例外にしても、米国5.9%、フランス5%、カナダ3%だった。

 朝鮮戦争はこれをさらに押し上げる。

 米国の国防費は1951年度に一挙に4倍に膨らむ。524億ドル、当時の為替レートで18兆8640億円になった。

 それから60年以上たった現在の日本の防衛費はいまだに4兆円台だから、18兆円という数字の大きさがわかる。当時の米国の国民所得の23%であり、歳出全体の66.5%というから、完全にバターより大砲である。

 トルーマン大統領は個人所得税40億ドル、法人税30億ドルの増税を考えていた。超大国に向けた歩みを進めていた米国ですら、膨大な軍事費をまかなうために増税を迫られた。斜陽の大国、英国、そしてフランスにはもっと厳しかった。

 英国は51年度から3年かけて34億ポンドを投入して軍備強化をすることになっていた。フランスも米国の要請で51年度から2兆フランをかけて15個師団増強を予定していた。

 武山は英国での生活水準の切り下げを予想し、「これから先は米国ではビフテキやオムレツはなかなか手が届かないことになりそうな気配だという」と書く。日本と同じ敗戦国のイタリアしかりである。

■見えぬソ連の軍事費

 欧米諸国の軍拡はソ連をにらんだものだった。一方、ソ連の国防費は予算全体の18.5%であり、米、英、仏のいずれよりも低かった。しかしこれにはからくりがあった。ソ連は他の予算項目に軍事費が含まれていたから、実際には予算全体の半分程度が国防費だった。

 今日、中国の軍事費の透明度の低さがしばしば話題になる。現在の中国は先輩社会主義国であるソ連がしてきたことを繰り返しているわけだ。

1951年
  12月24日
吉田首相がダレスに台湾の国民政府との講和を確約(「吉田書簡」)
1952年
   1月18日
韓国、李承晩ラインを設定
   2月15日第1次日韓正式会談始まる
   2月28日日米行政協定に署名
   4月28日対日講和条約、日米安全保障条約発効、日華平和条約署名(8月5日発効)
1953年
   1月20日
アイゼンハワーが米大統領に就任。ダレスが国務長官に
   10月2日池田勇人自由党政調会長が訪米。池田・ロバートソン会談
  12月24日奄美群島返還の日米協定署名(25日発効)

 武山が世界の主要国の軍事費を調べたのには意図があった。日本を論じるための比較材料にするためだった。

 まず戦前の軍事費を振り返る。

 平時といえた昭和4年(1929年)の軍事費は国民所得に対しては各国並みの4.1%で予算に対しては28.4%だった。満州事変が昭和6年(1931年)に始まり、昭和8年(1933年)には軍事予算の国民所得に対する比率は7.4%になった。

 昭和15年(1940年)といえば、真珠湾攻撃の前年である。この年の一般会計の陸海軍費は予算の38%、国民所得の8%と平時の2倍に膨らんだ。この年には臨時軍事費が一般会計の歳出総額とほぼ同額の15億1000万円となり、バターは消えた。

 

■米国から武器借りて警察予備隊強化

 51年以降の日本の軍事費はどうなるのか。武山は再軍備をにらんで考える。各国や日本の戦前並みの国民所得の4~5%に耐えられるのか。

経済の視点から世界の安全保障を分析した日経の武山泰雄

経済の視点から世界の安全保障を分析した日経の武山泰雄

 「明年度の治安費はまず1400~1500億円程度、つまり国民所得の2~3%程度が精いっぱいというのが政府の考えのようだ」「こんなところから最初の2年くらいは米国から武器を借りて警察予備隊を強化する程度だろうといわれている」と武山は書く。

 後段はそのまま自衛隊の歴史と重なる。今日の防衛費は当時は「治安費」と呼んだ。共産革命が語られていた時代だったからだ。

 「日米安全保障条約では日本が漸次自国防衛の責任を負うということになっているから先行き治安費の増大は不可避といわれ、財政当局も『27年後半は増税への転機になるだろう』といっているくらいだ」と日本の負担増に触れて、記事は終わる。

 武山は後に日経のニューヨーク特派員、常務取締役・論説主幹などを歴任した。主幹当時、1972年のニクソン米大統領の訪中を予測した記事で、71年度にボーン国際記者賞(現在のボーン・上田記念国際記者賞)を受賞した。2005年に82歳で亡くなる。晩年はナショナリスティックな言動が目立った。

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トルーマン、ニクソン、日米安全保障条約

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