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いまさら聞けない「ソーシャルメディア」とは?
ブロガー 藤代 裕之

2010/4/13 9:00
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 ソーシャルメディアについて、「よく分からないまま言葉を使っている」「活用したいけれど、どうしていいかわからない、怖い」という声を聞く。マスメディアともこれまでのインターネットサービスとも違う特徴を持つソーシャルメディアとは何なのか。

 1枚の写真を紹介したい。通勤途中に撮影した地下鉄の駅の伝言板だ。「いまさら、こんなもの使う人がいるのだろうか」と思うかもしれないが、この伝言板(メディア)は、ソーシャルメディアを考える際に、大きなヒントを与えてくれる。

 ソーシャルメディアは、無料のオンライン百科事典「Wikipedia」によると「誰もが参加できるスケーラブルな情報発信技術を用いて、社会的インタラクションを通じて広がっていくように設計されたメディアである」とある。具体例として、電子掲示板やブログ、ソーシャルブックマーク、カスタマーレビューなどのインターネットサービスを挙げている。

 確かにインターネットは、ソーシャルメディアに大きな力を与えているが、ネットサービスにばかり注目してしまうと、「ブログの次はツイッター」などと振り回されることになる。ソーシャルメディアは、人々の情報発信が作り出すメディアだ。コミュニケーションや会話といってもいい。それは一方的なものではなく、インタラクティブなやり取りのなかから、新たなつながりや価値、思わぬアイデアが生み出される。

会話やつながりを可視化

 会話から価値が生み出されるという事実は特に新しいわけではない。古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、対話を行うことによって矛盾を暴き、真理を発見させた。討論会などの意味で使われる「シンポジウム」という言葉はギリシア語の「饗宴」に由来する。

 では、何が新しいのか。それは、個人の情報発信がマスメディアのように多くの人々に伝わる可能性を秘めていることにある(ただし、必ず届くというわけではない)。パーソナルメディアは、個人から個人への伝達だった。マスメディアは多くの人に伝達可能だが、一方的で、資本や規制による制約があり、誰もが情報発信できるわけではなかった。ソーシャルメディアはインタラクティブな広がりを持つ。人々が情報を公開することで、会話や考え、つながりが可視化された。

 地下鉄の掲示板も、「先に行きます」という個人から個人へのメッセージを、通り過ぎる人も読むことができるし、時々どこの誰かわからない人から反応(落書きや突っ込み)がある点でインタラクティブだ。もちろん、読んだり書いたりできるのはその時間にその場所にいた人だけに限られるが、インターネットは空間的、時間的な制約を取り払った。さらに検索によって、関心や興味、評価などコミュニケーションや会話に必要な要素を簡単に探し出せるようになったことで、新たなつながりが生まれ、消費者の行動や企業のマーケティングに大きな影響を与えるようになった。

大事なのは「ソーシャルメディアで何をするか」

 ソーシャルメディアという言葉は、いつごろから使われているのだろうか。

 グーグルで検索すると「7,320,000 件」がヒットし、多くの情報がネット上にあるのがわかるが、新聞社のサイトで記事検索を行うと十数件しかない。

 元時事通信社編集委員の湯川鶴章氏が書いた「爆発するソーシャルメディア」が刊行されたのは2007年春だが、ネットの世界でもしばらくは広がらなかった。検索動向が分かるグーグルのツール「Googleトレンド」で調べる範囲を09年以前にすると、『検索ボリュームが不足しているため「ソーシャルメディア」のグラフを生成できません。』という表示が出る。検索結果が増えたのは2010年に入ってからだ。言葉は独り歩きし、消費されてしまう(ソーシャルメディアも流行で終わってしまうかもしれない)。技術やサービスも同様だ。

 07年夏に開かれたテクノロジーセミナー「爆発するソーシャルメディア 広報、広告、マーケティング業務はどう変わるのか」で注目されたのは仮想世界サービスの「セカンドライフ」だった。電通と博報堂DYメディアパートナーズの各担当者がその将来性を語り、関連書籍の発売も相次いだ。多くの企業が参入し、支援ビジネスも盛り上がりを見せたが、いまでは耳にすることは少ない。

 ネットサービスは次々と生まれて、次々と消えていく。期待されてしぼむものもあれば、予想を超えて急成長するサービスもある。ツイッターはその代表例といえるだろう。

 ツイッターの公式ブログによると、07年に1日5000ツイート(投稿数)だったのが、09年には250万、10年1月には5000万になっている。日本でもネットレイティングスの調査によると、09年7月に100万人を超えた利用者は10年2月には500万人を突破している。

 しかし、「ブログだ」「ツイッターだ」とブームに目を奪われていると本質を見失うことになる。大事なのはソーシャルメディアを使うことではなく、ソーシャルメディアで何をするかだ。

利用されなければ単なる“板”

 伝言板の話に戻りたい。

 この駅の乗降客は鉄道会社の公表データによると約8万人とのことだが、撮影時に書き込みはなかった。相手が遅刻したり待ち合わせ場所を変更したりする際に使われるのだろうが、最近では携帯電話やメールもあり、利用者も減っているだろう。そろそろ撤去してもいいかもしれない、他の多くの駅がそうしているように。利用されなければソーシャルメディア足りえない(単なる板だ)。もし、自社が開設したソーシャルメディアが伝言板のように閑古鳥が鳴いているなら、考え直す必要がある。

 目的のために適切なメディアを選ぶために、次回は、代表的なサービスの特徴を紹介し、ソーシャルメディアの「案内図」を示してみたい。メディアの特徴が分かれば歩き方も見えてくる。

〈筆者プロフィル〉 藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき) ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。学習院大学非常勤講師。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。

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