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リチウムイオン電池の劣化診断に挑む

2011/5/16 7:00
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 リチウム(Li)イオン電池が、あとどれぐらい充放電を繰り返して使えるか、前もって知ることはできないのか――。これは電池を使う誰もが思うことで、そのためには電池内部の劣化状態を正確に把握できればよい。

写真1 日産自動車が提案する、電気自動車用の電池を使った定置用蓄電池システム (写真:テクノアソシエーツ)

 ところが、この“劣化診断”は特にLiイオン電池の場合、技術的に難しく、積年の課題とされていた。その壁を打ち破ろうと技術開発を進めているのが横河電機である。同社が目指す手法が確立すれば、どのようなLiイオン電池でも電気的に測定することで寿命を評価できるようになる。

■電池の2次利用の普及に不可欠

 Liイオン電池の特性は通常、「放電曲線」によって表される。電池から一定の電流を取り出すと、時間とともに電圧が低下していく。その電圧値を、横軸に時間をとってグラフ化したのが放電曲線である。

 ところが、電池内部の欠陥や材料の経時変化などによって劣化が進むと、あるとき突然、その特性が放電曲線から外れて電池が使えなくなる。従来、この劣化状態を知るには、電池を分解して内部を直接見るしか有効な手段がなかった。このため、電池が使える状態でその寿命を見積もるには、電池の材料・構造や製造方法、充放電履歴などのデータから経験則に当てはめて電池メーカーが予測するしかないというのが一般的だった。

 そこで困るのが、電池の2次利用(再利用)への対応である。今や、不安定な電力供給に対する備えとして住宅にも蓄電用のLiイオン電池を導入したいというニーズが高まっている。電気自動車(EV)で使い古した電池を活用すれば、ユーザーの導入負担は軽くなりそうだ。このような2次利用品を普及させるには、寿命予測に必要なデータを各メーカーが共有する必要がある。しかし現実には、各社は個別・バラバラに取り組んでいるのが現状だ。

 例えば、日産自動車は住友商事と組んで「4R」ビジネスと称する電池の2次利用の事業化を検討しているが(写真1)、その実現に向けてEV「リーフ」の充放電情報をデータセンターに集約する仕組みを構築している。その一方で、伊藤忠商事が米国インディアナ州で実施する米Duke Energy社と共同の実証実験では、約80台のEVに載せた電池の収集・解析を行っていくなど、2次利用に向けた取り組み方やアプローチも異なる。しかも、収集・解析したデータには電池の製造ノウハウにかかわる重要な情報が含まれることから、電池メーカーはその内容を競合メーカーに開示しない可能性が高い。

■将来はサービス・プロバイダも視野

 横河電機が開発する手法は、こうしたメーカー間の垣根さえも取り払う。具体的には、インピーダンス(抵抗成分)測定器を使い、電池の交流インピーダンスを測定する。周波数を低周波から高周波まで変化させ、その際のインピーダンスの変化を複素平面上にプロットすると「コールコール・プロット(Cole-Cole Plot)」と呼ばれるグラフが得られ、電池の場合は複数の半円から成る軌跡になる。この半円の大きさや形状、位置の変化から電池の劣化状態を分析する。

 例えば、半円が右方向にシフトすると電池の電解質が劣化しており、直径が大きくなると電極が劣化していることが分かる。さらに、パルス状の放電電流に対する電池電圧の応答波形の変化を見る手法を組み合わせることで、短時間で劣化具合を測定することも可能になるという。

 同社は、自動車メーカーなどの電池ユーザーや電池メーカーの協力を仰ぐことで、こうした測定結果を基にした分析と実際の劣化状態との相関が取れつつあるという。順調に行けば2011年度中には開発にメドをつけ、「2012年春には技術発表をしたい」(同社ソリューション営業統括本部第4営業本部技術部電機電子・電池担当部長の茂木宏哉氏)。この分野における同社の事業は、計測用ハードウエアソフトウエア、解析ツールの販売を基本とするが、将来的にはLiイオン電池の劣化診断を請け負うサービス・プロバイダーとしての事業展開も検討していくという。

(テクノアソシエーツ 朝倉博史)

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